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「就活と日本社会」のレビューを書きました

日野瑛太郎さん批判や読解力が欠けたコメントを取り上げている内にすっかりご無沙汰となった感がある、就活の問題点を検討する試み。ただつい最近、常見陽平さんが「就活と日本社会」という就活を社会問題として捉える本を出したことを受けて、久しぶりに問題に触れてみた。


結論から言えばこれはかなり酷い本で、具体的にどこが問題なのかはこの記事とamazonのレビューにて記した。かなりの長文となったけれど、これでもまだ本の問題点を一部しか指摘していないということはこの場を借りて書いておきたい。なお、レビューと併せて過去記事「100社受けてすべて落ちる就活生もいる一方で、全く行動しない就活生もいる」を読むと常見さんの本の問題点が一層浮き彫りになると思うので、良かったらそちらにも目を通してみてください。

●「就活と日本社会」(評価:星1つ)

「肝心なところが論証されていない。また、先行研究の紹介にも不適切な点が見られる。」

一見企業は学生間の平等を担保した採用活動を行っているように見えて、実は主な採用対象を偏差値が上位クラスの学生に限定している場合がある。それにも関わらず中堅以下クラスの大学の学生たちは「もしかすると自分たちも大手企業に入れるかもしれない」という「平等幻想」に囚われることでそうした企業の選考にのめり込み、それが苦しみを生んでいないか。それよりは自分の大学のレベルに合った分相応な就職先を見つけることに注力した方が無駄に苦しまずに済むのではないか・・・ざっくり言えばこれが本書の肝となるメッセージ。著者は「平等という幻想、誰でも自由競争でより高い階層に移動できるのではないか、という幻想が人の負荷を増やしてしまっているのではないだろうか」・「平等であるという幻想、より高い地位を獲得できるのではないかという希望が人々を苦しめるのである」と問題を規定している。


本書には様々な問題点があると感じられたけれど、その中で最大のものは「学生は大手企業を志向している」と学生の行動パターンを一括りにし、中堅以下クラスの大学の学生がどのように就活に取り組んでいるのかに関する論証が抜け落ちている点だと思う。その論証がなされないまま中堅以下クラスの大学の学生たちに「平等幻想を捨てよう」と説いても説得力が無い。


この点、例えば小杉礼子氏が編集した「『大学生の就職とキャリア――「普通」の就活・個 別の支援』」という本には、偏差値が低い大学の学生は上位レベルの大学の学生と比べると就活のスタート時期が遅かったり、活動量が少なかったりする(つまり、企業の選考を積極的に受けないということ)旨の調査結果がある。即ち、著者が危惧する「平等幻想に囚われて大手企業の選考に数多くアタックして撃沈して疲弊する中堅以下クラスの大学の学生たち」は実のところそれほど存在しないのでは?ということは、彼らに「平等幻想」を捨てることを説いても、それはただの空回りなのでは?著者は「平等という幻想を手放せば就活も採用も変わる」と言っているけれども、本当にそれほどまでの効能があるのか?


なお本書では触れられていないが、当の著者自身、著書「就社志向の研究」において「学校群により、就活の動き、結果は違う」と述べ、学生の就活を一括りにすることが妥当ではない旨を指摘している。それにも関わらず、上述の通り本書では学生の行動パターンを一括りにした上で「平等幻想を捨てよう」という問題提起に飛びついているのはおかしなことだ。著者は本書の中で「現実を捉えない、大雑把な議論こそ罪である」と述べているけれども、当の著者がそうした議論を一番肝心なところで展開しているように思える。


勿論、大手企業の選考を数多く受ける中堅以下クラスの大学の学生たちは一定数いるのだろうから著者の問題提起の意義はゼロではないだろう。しかし、かなり小さいとも言えると思う。それどころか、本書の論調に従うと就活うつの原因が「就活生が(学歴差別の実態を理解していないという事情があるとはいえ)身の程知らずだから」と単純化されかねない危険性があるという点で益よりも害の方が大きそうである。


上記の要素だけでも相当のマイナスポイントだけれども、本書にはその他にも他者の議論・先行研究の紹介に不適切な箇所があるという問題も存在し、それで評価を星一つとしている。特に酷いのが小山治氏が提唱した「採用基準の拡張」という概念の紹介で、著者は「採用基準の拡張については、小山が指摘している通り、選考に参加する者との対話を通じて、求める能力・資質などが追加されることが確認された。つまり、選考活動、具体的には面接を繰り返すうちに、求職者に対する質問内容は追加されていった」と書いている(p.104-5)。しかし、実際には小山氏が言っているのはそういうことではなくて、彼が言う「採用基準の拡張」とは「面接を繰り返すうちに」採用基準が増えていくという話ではなくて、「とある1回の面接」を評価する際に、元々は評価用紙記載の評価項目にはなかった要素が急遽評価対象として加わるという話である。著者の紹介は読者の誤解を誘うものであり、仮に小山氏がこの箇所を読んだらどう思うのかは中々興味深いところ。


このレビューでは本書の問題点の内「肝心なところが論証されていない」・「先行研究を歪めて紹介している」というものを指摘したけれど、これらから言えるのは著者に知的誠実さが欠落しているということに尽きるのかもしれない。もっと真っ当な論者の仕事に光が当たるのを願うばかりである。

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