スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「アップルが新入社員に渡すメッセージがブラック企業みたいな件」から見る、「安易なブラック企業論」の危険性

Appleが新入社員に初日に渡すメッセージが多くの人からの支持を受けている。その一部を引用する。

あなたの指紋が残った仕事。決して妥協しない仕事。週末を犠牲にしてでも取り組みたい仕事。Appleではそんな仕事をすることができる。無難に人生を過ごしたい人はここには来ない。一番深い所まで泳ぎたい人だけがいる。

このメッセージに関連して、常見陽平さんが「アップルが新入社員に渡すメッセージがブラック企業みたいな件」という記事を書いた。常見さんは記事の中でメッセージの、あるフレーズに噛み付いている。それは「週末を犠牲にしてでも取り組みたい仕事」というフレーズだ。常見さんによると、このメッセージは「吐き気を催す表現」とのことだ。


どういうことかというと、人間には休息が必要なのに、休息を犠牲にしてもなお仕事に打ち込むことを良しとする風潮はおかしいのではないかという問題提起。常見さんは「やりがい搾取」という言葉を使って、企業が社員を「うちの会社、最高!」という高揚感に包ませることで、社員が過労に追い込まれる危険性について警鐘を鳴らしている。


今回常見さんが用いた「やりがい搾取」という言葉だが、これは本田由紀先生が著書「軋む社会」の中で用いた「やりがいの搾取」という言葉を借りたものだと推測する。これと似たような言葉として、阿部真大さんが述べた「自己実現系ワーカホリック」がある。いずれも、特に若者がサークル的・カルト的な「ノリ」の中で、自分の「夢」や「成長」を目指して、結局は働きすぎに巻き込まれるケースを問題視するために作られた概念だ。僕も以前、「海外ニートさんの『仕事なんてクソだろ?job is shit!』という言葉を忘れないでいたい」という記事で、本田先生や阿部先生の研究について軽く触れた。


ただ今回常見さんの記事を読んで、僕自身も「安易なブラック企業論」をしてしまっていたのではないかと思わされた。例えば「長時間労働をする職場=ブラック企業」というような、安易なレッテル貼りをしていたのではないかと反省させられたのだ。


そもそも常見さんはアップルのメッセージを引用して「やりがいの搾取」について触れているが、本田先生の本を読むと言葉の使い方がおかしいことに気づく。そもそも本田先生は企業が「安定雇用の保障や高賃金という代価なしに、労働者から高水準のエネルギー・能力・時間を動員したいと言う動機を強く持っている(「軋む社会」p103)」という背景を前提として「やりがいの搾取」という概念を生み出した。これに照らすと、アップルについて言えば、多分アップルは安定雇用の保障はしないだろうけれど高賃金は保障しているはずなので、アップルのケースに触れた上で「やりがいの搾取」論を展開することは筋が違うのだ。もし「やりがいの搾取」論を主張したければ、アップルではなく、ワタミなどの事例を取り上げないとおかしい。仮にアップルの社員が労働時間・成果の割に給料を得ていないという事情があるなら、アップルを取り上げることは間違いではないのだけれど・・・。


企業による「やりがいの搾取」は確かに注意しなければならない。しかし、今回の常見さんの記事から学ばなければいけないことは、安易なブラック企業論を無意識のうちに展開してしまう危険性だ。アップルに限らず、企業が社員のモチベーションアップのために「週末を犠牲にしてでも取り組みたい仕事」という表現を使っただけで、「社員が働きすぎに巻き込まれるかも!」なんて問題提起されたら、企業からしたらたまったものじゃないだろう。アップルの「週末を犠牲~」という言葉も社員に「おい、週末も働けよ」と言っているのではなく「週末も出社したくなるような、わくわくする仕事に取り組めるよ!」という意図があるはずなのに・・・。


「ブラック企業」という言葉に明確な定義づけがなされているか否かは知らないが、自戒も込めて言うと、「長時間労働」・「週末も出勤」などのフレーズをもって、即「ブラック企業論」につなげるのは非常に安易だ。ブラック企業の定義を明確にすることの必要性については考えがまとまらないでいるが、僕は本田先生の言うような「企業が、安定雇用の保障や高賃金という代価なしに、労働者から高水準のエネルギー・能力・時間を搾取する」ケースを優先的に糾弾していくことに意義があると考えている。社員に良い待遇を提供しているであろうアップルのメッセージまで問題視することは、いくらなんでもやりすぎだと思う。


「長時間労働」・「週末も出勤」などのフレーズをもって、即「ブラック企業論」につなげるのは非常に安易だという考えに共感してくださる方は、もし宜しければクリックをお願いします。
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

No title

>アップルの「週末を犠牲~」という言葉も社員に「おい、週末も働けよ」と
>言っているのではなく「週末も出社したくなるような、わくわくする仕事に
>取り組めるよ!」という意図があるはずなのに・・・。

これは違い、アップルのメッセージはそのまま週末も働けです。
週90時間働けという会社で、従業員は90時間Tシャツを着て、ジョブズはそれを従業員に要求していました。
今は手元に自伝本がありませんが、自伝でもアップルで働きたければアップルを愛し、何よりもアップルで働くことを優先しろ。高い給料も払わない。プライベートなどないと思え。アップルのために人生を捧げることに喜びを感じられる奴だけ来い」という趣旨のことを堂々と宣言していたと書かれています。
アップルの従業員は口々にジョブズの質問におびえていていつもビクビク仕事をしていたと言います。一度バカだと思った人間は完全に人間のクズだとののしり倒してその後は耳も貸さないという扱いです。(経営陣も認めている風土です)

客観的指標から見ると世間一般で言うブラックだと思います。
ただ、従業員がこのような厳しい環境で働くことを自ら志願したのですから、それでいいのかもしれません。(独立して起業したばかりの社長なども週末などない勢いで働きます。それを選択したのは自分…)

Re: No title

>吊られた男さん

アップルのメッセージ全体を見ると「週末を犠牲にしてでも取り組みたい仕事=週末も出社したくなるような、わくわくする仕事に取り組めるよ」と読み取ったことには後悔はありませんが(笑)、週90時間+高い給料も払わない、プライベートなどないと思えなどの労働環境だとは恥ずかしながら認識していませんでした。少なくとも高給は保証されているだろうという認識でした。本当にご指摘有難うございました。


>読んでくださった皆様への補足
吊られた男さんのご指摘のように今回の記事には明白な誤りがあるわけですが(笑)、それでもやはり、常見さんがアップルのケースを取り上げて「やりがいの搾取」論を展開するのは僕には違和感がありました。常見さんも記事で言っていますが「やりがいの搾取」の特徴は、企業が社員を「うちの会社、最高!」という高揚感に包ませることで、社員を過労に追い込む(むしろ社員が自ら望んで過労に服させる)ことにあります。それに対して吊られた男さんの記述を見ると、アップルは社員が高揚感に基づき自ら望んで過労に服すると言うよりは、単にジョブズが怖くて仕事を頑張っている状態があるだけなので(ジョブズ亡き後はどうなったんでしょうか・・・)、これは「やりがいの搾取」の話とは異なるというのが僕の認識です・・・と精一杯自己弁護してみました(笑)

No title

アップルの場合は、その非人道的扱いの面も知れ渡っており、それを分かって入社する分だけ体制が強いのではないかと想像します。

また、あの美しい製品を世の中に出すことが高揚感かもしれません。「日常の仕事は地獄の日々。しかし、その長きにわたる地獄の日々もあの世界中に称賛される美しいアップル製品を世に送り出すという成果のためなら歯を食いしばって頑張る」という感じかもしれません。
どんなに辛くてもアップル製品を世の中に出す魅力の方が強い。アップル製品を世の中に出すことは強力な麻薬のような魅力を持っているのかも。

世の中には世間一般の幸せを求めず「何でそんな辛いことを頑張れるんだ」ということに没頭する人もいますが、そういう価値観の違いはありそうです。
そんな企業があってもいいと思います。

Re: No title

> 吊られた男さん

こんばんは、昨日は誤りのご指摘有難うございました。

>世の中には世間一般の幸せを求めず「何でそんな辛いことを頑張れるんだ」ということに没頭する人もいますが、そういう価値観の違いはありそうです。そんな企業があってもいいと思います。

僕も同じ立場ですかね。一方で常見さんの記事でも触れられていますが、企業のマインドコントロールにより労働者を「働きすぎ」の状況に置かせることには注意しなければならないとも思っています。この点については常見さんと同意見です。ただ、外から見たら「それ明らかに洗脳だから」と言える場合でも、当の労働者が「いや、この会社のためならいくら働いてもそれでいいんだ!」と言い出した場合、その理屈を第三者が否定することができるのか。僕は吊られた男さん同様「そんな企業・働き方があってもいい」と思っていますが、同時に自分の考えが正しいのか、疑問に思っています。

No title

Apple Stores’ Army, Long on Loyalty but Short on Pay - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2012/06/24/business/apple-store-workers-loyal-but-short-on-pay.html?_r=1&smid=tw-share

本当にappleって入ったら大変そうですね。

Re: No title

はじめまして、コメント有難うございます。

また、記事のご紹介有難うございました。記事に、ものすごい数のコメントがついていますね(笑)まだきちんと読めていませんが、アップルに関する記事を書いた身としては精読しておきたいところです。

No title

>アップルの従業員は口々にジョブズの質問におびえていていつもビクビク仕事をしていたと言います。

僕の友達のアップルマニア(笑)から聞いた話なんですけど、

ジョブズが部下が作った製品に対して、「もっと薄くしろ」と言った時に部下が「これ以上は無理だ」と反論した所、ジョブズはその製品を水槽に投げ入れてしまったんです。

そうしたら、製品からぶくぶくと空気が湧きだして、ジョブズがすかさず一言「君の負けだ」と。

つまり、ジョブズはまだ薄く出来る、という確信が合ったんでしょうね。

このエピソードから、ジョブズは妥協を許さない人だったから、必然的に部下に対しても厳しい仕事を要求していたのだと。

だけども友達曰く、日本の様に上司に言い返せない職場ではなく、逆にジョブズと部下が常にケンカしてる職場だったらしいですw

向こうは日本みたいに終身雇用ではなく、クビも簡単に切れる代わりに成功した時の報酬はかなりでかいので、日本の基準でブラックというのは違うと言うのはものすごく同意です

>週90時間+高い給料も払わない、プライベートなどないと思えなどの労働環境
これは、ソースがあるのでしょうか…

訳だけを鵜呑みにしていいかは疑問がありますね…

まぁ僕のこの投稿も友達から聞いた話だから信憑性はまったくないんですが(笑)

Re: No title

> すみ さん

お久しぶりです、コメント有難うございます。

>友達曰く、日本の様に上司に言い返せない職場ではなく、逆にジョブズと部下が常にケンカしてる職場だったらしいですw

ジョブズの言うことが絶対という訳ではないということですね。

>向こうは日本みたいに終身雇用ではなく、クビも簡単に切れる代わりに成功した時の報酬はかなりでかいので、日本の基準でブラックというのは違うと言うのはものすごく同意です

冷泉彰彦さんは、僕とはまた違う理由で「アップルがブラック企業とはいえない」理由を記しています(http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2012/05/post-429.php)。

No title

ジョブズだけの会社だったやん
結局、彼からなにも学習してないみたいだし、これからどうなるかわからん。

Re: No title

> ジョブズだけの会社だったやん というコメントをくださった方へ

こんばんは、コメントありがとうございます。

>ジョブズだけの会社だったやん。結局、彼からなにも学習してないみたいだし、これからどうなるかわからん。

最近、「クックCEO、アップルの現状について反論:"困難な状況にはない"(http://japan.cnet.com/news/business/35032652/)」という記事が載っていましたね。もちろん今後どうなるかは分かりませんが。


main_line
main_line
ブログランキング
おかげさまで、ブログ村の「就職バイトブログ」のカテゴリで「1位」を取ることが出来ました。この場を借りて、お礼を申し上げます。これからも記事を多くの人に読んでいただけたらと思いますので、もし宜しければ、今後ともランキングへのご協力を宜しくお願いいたします。
RSSリンクの表示
follow us in feedly 
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンク
FC2カウンター
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
プロフィール

lingmu

Author:lingmu
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。