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<書評>POSSE vol.10 特集 シューカツは、終わらない?

この度の炎上により、改めて「文章をネット上に書くことの怖さ」を身をもって体感したけれど、一方でこの出来事のおかげで、このブログを読むことを楽しみにしてくださっている読者の方々がいることも実感できた。本当に有難うございます。


中には非公開で「このブログに出会ってから、就活や社会について、色々と深く広く考えるきっかけになりました」とのコメントを寄せてくださる方もいて、本当に励みになった(非公開のコメントもちゃんと読んでいますよ!笑)。ただ、僕が記事を書く際には、既卒者カフェへの取材などの例外的なケースを除いて、本やwebなどの参考資料に目を通している場合が多々ある。そこで、僕が読んでいる資料の書評を書けば、読者の方が就活問題についてもっと深く知るためのきっかけを作ることが出来るのではないかと考え、この度「書評」カテゴリを新たに設けた。


その第一弾は、雇用問題論争誌「posse」のvol.10、「<シューカツ>は、終わらない?」だ。この本を読めば、現在の大卒就職のあり方が孕む問題点を一通り網羅することが出来る。「現在の就活って何か問題あるような気がするんだけどなぁ・・・」という漠然とした違和感を覚えている段階の人から、「就活の問題点は何となく把握している。私が知りたいのは、その問題点に対してどんな対策を講じていけば良いのかだ」という意識を持つ段階に至っている人まで、就活問題に関心のある人なら読んで満足する1冊であることは間違いない。


現在の就活に漠然とした違和感を覚える人には、特に本書の「10分で分かる"新卒一括採用"入門」、「就活に追い詰められる学生たち―就活生の7人に1人がうつ状態」、「"就活論壇ブックガイド」を読むことをお薦めしたい。前2つの章では、「内定が無いまま卒業したら、就職活動において不利な立場におかれる」、「選考にて、不明瞭な能力が重視される」など、現在の就活が持つ歪みを明らかにしている。もっとも、最近就活を経験した人からすれば当たり前のことが書かれていて、特に新しい問題点が発掘されているとは僕には思えない。あくまでも、オーソドックスな論点を確認するために有益だと思う。


その確認を済ませた上で、「"就活論壇ブックガイド」に目を通すことで、就活問題についてさらなる知見を得るための準備をすることが出来る。この「"就活論壇ブックガイド」は、就活システムの改革を唱える本を「posse」がピックアップし、その紹介をする章だ。一言で「就活システムの改革」といっても、その改革方法は人それぞれで異なる。極端な話、人によっては「新卒一括採用の廃止」を求め、一方で「新卒一括採用の廃止を否定する」と唱える論者もいる。「"就活論壇ブックガイド」を読むことで、就活問題への解決方法が論者により異なることを実感できることは間違いなく、その中でまずは自分の感覚にあった方向性の議論を提起している論者の本に目を通してみることをお薦めしたい(ちなみに、posseは「若者の立場から論評された就活本は多くない」と言っており、以前紹介した「既卒者カフェによる既卒者の就活体験記」のニーズはかなりあるのではないかと思わされる。「既卒で就活していて、こんな問題点に直面しました」という当事者発信は明らかに少ない)。


そして、「"就活論壇ブックガイド」に頼らず、就活問題への対策をあくまでもこの本を通じて知りたいと考える人には、特に本田由紀先生と常見陽平さんの対談「"新卒採用廃止"は若者を救えるのか」をお薦めしたい(途中までhttp://synodos.livedoor.biz/archives/1696784.htmlで読むことが出来る)。海外視察の経験から裏打ちされた本田先生の提言が非常に参考になる。


例えば、日本の就活では「総合職採用であるがゆえに、求める人物像が曖昧になる」との問題提起がなされることがある(僕も過去に、就活生に「入社後にやりたい仕事」を考えさせといて、面接で「希望する部署に配属にならないかもしれないですけど、いいですか?」と聞くのはおかしくないか、という記事を書いた)。対策として「人事部じゃなくて、現場に採用させれば求職者に求める能力も今よりは明確に指定出来るのではないか」という提言がなされることがあるが、これに対して常見さんは「(採用を)現場に任せすぎると組織が活性化されなくなるということがあるんです」と疑問を呈している(ちなみに、常見さんの発言の根拠は本には書かれていない→すいません、常見さんは「例えば"××事業部で採ります"となって現場に全権限を委譲すると、いま使いやすい人ばかり採ってしまうという可能性があるんですね」とも述べているので、これが発言の根拠となるでしょう・・・。失礼しました。もっとも、常見さんが懸念する「可能性」が生じる根拠は本からは読み取れない)。しかし本田先生は常見さんの疑問に対して、アメリカ企業へのヒヤリングの経験から、将来の幹部候補は本社人事部で戦略的に、現場での採用は現場のボスが必要な人材を採るという「採用の複線化」が起きていることを指摘する。これは、一つの面白いアプローチだと思う。


他にも、本田先生が述べた「弾力性のあるジョブ型採用」という提言も面白い。通常、「ジョブ型採用」と聞くと、面接時に希望の職種を述べ、入社後にその職種を極めていくということをイメージする人が多いと思う。しかし本田先生は、またまたアメリカの企業へのヒヤリングの経験から、「入社からずっと経理をしていたけれど、経験を増やしたいから社内公募に応募して社長秘書をしばらくやって、その後また別の職種を考えたい」と語る女性社員と出会う。「ジョブ型採用」に対しては、「入社後にその仕事が合わなくても、ずっとそれをやらなきゃいけないんだよ」との批判がなされることがあるけれど、その点については一定の弾力性を導入すれば解決できるかもしれない。アメリカの企業のあり方を無批判に導入することは危険だけれど、参考に出来る点は参考にした方が良いに決まっている。本田先生の提言に目を通すことが出来るという点だけでも、本書を購入する意義はあるとすら僕は思う。ちなみに、常見さんは対談中現在の就活や、巷に溢れる就活改革案への「ネガ出し」はよくしているけど、荻上チキさんが最近良く述べている「ポジ出し」は殆どしておらず、ゆえに彼のパートに目を通す価値はあまり無いと僕は感じた。


個人的には本への不満はあまり無いのだけれど、あえて述べるとすれば、多少論点の数は絞っても良いから、本田先生と常見さんがそれぞれの主張の対立点について深く議論をすればもっと面白かったと思う。対談の始めに「お会いできて大変光栄です。本田先生の書かれていることとは、落としどころの違いはあるんですけど、根っこにある学生に対する思いや、就活のここが問題だという意識が同じなんじゃないかなと思っています。(常見さん)」、「そんなに常見さんと私と意見は変わらないんじゃないですかね。私の方がややゴリゴリで、理想論的なことを書いている傾向がありますが(本田先生)」と双方述べているが、例えば「企業の採用活動の、あるべき開始時期」については常見さんが「企業は、大学1年生に内定を出しても良い」という立場なのに対して本田先生は「大学に教育の責任を取らせるために、大学教育がほぼ終わった後に就活が始まるようにすることが必要だと思います」と述べている。この点、常見さんは対談中「求める人物像の明確化」にも賛成しているのだが、これに対して本田先生が「まだ大学で何も学んでいない大学1年生のエントリーに賛成しておいて、それと同時に"求める人物像の明確化"を唱えるのはおかしいんじゃないですか。大学で能力を培えるようにして、学生がその能力を基に就活をして、企業もその能力を重視するという流れのほうが自然じゃないですか」と突っ込みをいれても良かっただろうと思った。別に対談中は仲良くする必要なんか無いと思うので・・・。このような細かい不満はあるが、上で述べたように、全体としては特に不満は無く非常に良書だと僕は思っているので、まだ読んでいない方にはぜひ一度目を通すことをお薦めしたい。


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No title

常見氏がますますわからなくなってきた・・・・・・
「(採用を)現場に任せすぎると組織が活性化されなくなるということがあるんです」→その根拠は?では日本型雇用は組織が活性化するの?活性化とは?
大学で何も学んでいない1回生のエントリーを是するのに、ジョブ型雇用に賛成する矛盾→そのとおりだと思う。てか常見氏は勉強を社会で生かせるように提言する団体に賛同していましたよね?
まあいいや。
書評参考になりました。POSSEおもしろいですよね。この回は読んでいないので買おうと思います。
僕が最近いいな、と思った本は岩波ジュニア新書の「しあわせに働ける社会」です。この本はまさに若者視点から就活や労働の問題点を詳細に記載しているのですごくよかったです。管理人さんにもぜひおすすめします。

おはようございます。
私は現場の採用はあまりオススメしませんね…採用権も権力ですから現場のボス次第ではメリットのないコネ採用や採用責任を負うことで評価も前のボスの採用者は低く評価されてしまう事が有り得ます。
特に現場は閉じられた世界なので現場のボスを過信してはいけません(笑)
新卒ないし若い人が現場以外の世界を知ることができなくなるのはもったいないです。
まぁもっと簡単に仕事を変えられたり、事前情報があればいいんでしょうけど…

全く関係ないけど今から手術です(笑)

Re: No title

> takeshiさん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>「(採用を)現場に任せすぎると組織が活性化されなくなるということがあるんです」→その根拠は?

すいません、これについては僕の記述が足りなかったので追記しました。もっとも、「では日本型雇用は組織が活性化するの?」という疑問は依然として残りますが。

>僕が最近いいな、と思った本は岩波ジュニア新書の「しあわせに働ける社会」です。

買ってはいませんが、最近本屋で1章と2章をさらっと立ち読みしたばかりなので、この本を紹介されて少々驚いています(笑)確かに良い本のような気がしますね。買おうかな・・・。

Re: タイトルなし

> スクラップ さん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>私は現場の採用はあまりオススメしませんね…採用権も権力ですから現場のボス次第ではメリットのないコネ採用や採用責任を負うことで評価も前のボスの採用者は低く評価されてしまう事が有り得ます。

海外企業とかではその辺、どう対処してるんですかね・・・。それとも対処できずに問題になっているのか(笑)

>全く関係ないけど今から手術です(笑)

ここで言っても無駄かもしれませんが、頑張ってください!

あやしい知識だけど…

ちょっと聞きかじった知識ですが
海外とゆーかアメリカは
職種給がメインで同一賃金同一労働だそうです。
この仕事をする人はこの給与なので評価しやすいし、ジョブ型雇用になって行くんだと思います
日本は職能給がメインで同一賃金同一能力なので違う仕事してるのに能力を比べる形なのでジョブ型雇用をしにくいんだと思います
評価しにくいですし、異動前提にしてるので…

ヨーロッパは専門給というのがあるらしいですよ

Re: あやしい知識だけど…

> スクラップさん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。コメントできていると言うことは、恐らく手術が上手くいったのでしょう!良かったです。

「海外とゆーかアメリカは職種給がメインで同一賃金同一労働」というのは僕も聞いたことがあります、何となく(笑)専門給は、聞いたことがあるようなないような・・・。特別なスキルを持っている人はその分給料が増えるということでしょうかね。

No title

職種別採用や職能給・職務給の話なら6月のプレジデントにあった富士通の新卒採用体制の記事が参考になるんじゃないかなあ。
ヤフーニュースから検索したら見れたはず。ブログ主さんが既に知ってたら申し訳ないw

Re: No title

> の さん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>ヤフーニュースから検索したら見れたはず。ブログ主さんが既に知ってたら申し訳ないw

全く知りませんでした!(笑)ご紹介、有難うございます。探してみますね!
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