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日本「が」職業教育訓練「を」無視している?

濱口桂一郎先生がブログで、今月4日にOECDが公表した韓国の職業教育訓練に対する評価を取り上げている(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/oecd-dba2.html)。これは、「学校を超えた技能」というプロジェクトの一環で、OECD加盟国の職業教育訓練の実態へのレビューを目的とした調査である。


濱口先生の和訳によると、OECDは韓国に「韓国は、急速に変化する労働市場で企業が必要とする技能や専門性をもって学生たちが大学を卒業できるように、その職業教育訓練プログラムを改革するべきである」、「韓国の高校後教育プログラムと職業訓練機関を強化することは、韓国が高水準の技術的・職業的技能への増えつつある需要に応えることを助けるであろう」、「主な課題は、韓国の労働市場と技能制度が、広く尊重されている教育資格とは反対に、経済によって必要とされる技能への投資へのインセンティブをあまり含んでいないことである」、「高い地位を有する国家機関を通じて職業訓練へ産業界を巻き込むこと」などの提言をしたとのこと。濱口先生が参照した英文はこちらのurl(http://www.oecd.org/education/educationkoreashouldimproveitsvocationaleducationprogrammessaysoecd.htm)で読むことが出来る。


ちなみに、日本はOECDから職業教育訓練に関するレビューを受けていない。OECDによると、

Full country policy reviews are being conducted in Austria, Denmark, Egypt, Germany, Israel, Korea, the Netherlands, Switzerland, the United Kingdom (England), and the United States (with case studies of Florida, Maryland and Washington State). Shorter exercises leading to an OECD country commentary will be undertaken in Belgium (Flanders), Canada, Iceland, Romania, Spain, Sweden and in Northern Ireland and Scotland in the United Kingdom. Background reports will be prepared in all these countries, and in France, Hungary and Mexico.

とのことで、どこにも"Japan"という記述は見当たらない。


この濱口先生の提言を読み、且つ韓国の職業訓練を見学したことがある人は「韓国の職業訓練の内容は日本を超えているのに、そのような韓国ですらOECDから学校制度と職業訓練との連携を助言されているのか」と驚き、日本はOECDから無視されているのではと嘆く(http://d.hatena.ne.jp/t1mannen/20120909/1347185719)。それに対して濱口先生は、「日本国政府(OECDの担当部門が教育局なので、当然担当は文部科学省)が、こういう職業教育訓練に関わるプロジェクトに参加しようとしないから、OECDとしては文句の言い様すらないのです(中略)日本"が"職業教育訓練"を"無視しているのです」と述べる。濱口先生の言うことが正しければ、これは相当まずいのではないか。


想像だけど、国が「職業教育訓練」の向上に関心を持たないのは「どうせ企業が労働者を育てるんだから、それで問題ないって!」というという意識があるからではないかと思う。要は、OECDが韓国に提言したような「企業が必要とする技能や専門性をもって学生たちが大学を卒業できるように」という発想が希薄なのだということ。


この発想は国だけでなく多くの社会人が持ち合わせていないもので、それが日本の課題なのではないかと思う。社会人から就活生によく投げかけられる言葉で僕が嫌いなものの一つに「仕事は会社に入ってから覚えていけば良いから、学生時代は遊んでおいたほうが良いよ」というものがある。勿論学生時代に思いっきり遊ぶことは大切で、その点においてこのアドバイスは間違っていない。しかし一方で僕は、このアドバイスは学生が大学などの教育機関を通じて職業的技能を修得することのインセンティブを失わせ、ひいては日本の人材を弱くするものと考えている。そのくせ、学生にこのようなアドバイスをしておきながら「海外の学生、勉強してて良いわ~。遊んでばかりの日本の学生なんかより使えるわ~」とか言い出すから、なおさらタチが悪い(「社会人様は外国人留学生に勝てるんですか?」という記事でも書いたけれど、「外国人採用」の話がニュースになると、「真面目な留学生は即戦力」「日本人の新卒を育てるより効率的」とか言い出す採用担当者が出てくる)。


同じような理由で、新卒一括採用を支持する理屈としてよく用いられる「新卒一括採用という慣行があるからこそ、大学で専門知識を学んでいない人が採用される可能性がある(つまり、学生が大学という場で技能を身につける必要性は軽視している)」という理屈も僕は嫌いだ。確かに現在そういうメリットがあることは否定しない。でもこの理屈は、あくまでも企業が新卒のための教育コストを削らず、「知識も経験も無い新卒者を一括採用→企業で一から知識を修得」という流れを維持することによって成り立つ、大変脆弱な議論だと思う。企業が教育コストをカットしたり、語学力などに優れる外国人・豊富な社会人経験者の採用にシフトしたりすればこの理屈は一瞬で吹き飛ぶし、そのときに困るのは未来の新卒者のはずだ。


仮に「労働者の技能を高める役割は、事実上企業に一任しよう」という意識があるとすれば、そのような意識は捨て去るべきではないかと思う。OECDが韓国に提言したように、または学者の本田由紀先生が提言しているように、大学などの教育機関を通じて職業に役立つ基礎的な知識を修得できるようにして、各労働者がいわば「武器」をもてるような形にするべきだ(そして、企業もそれをある程度評価する)。また、企業に就職できなかった場合でも能力開発ができるように、公的職業訓練も形だけのものじゃなくて、きちんと企業が求める水準を満たすスキルを身につけられるような場にする。「人材をどのように育成するか」というトピックは、さすがにうやむやにして済む問題ではなく、「仕事に必要なスキルは会社に入れば身につけられるんだから、それで良いじゃん」じゃなくて、会社の外部における社会的トレーニングのシステムの拡充について、もっと考えていかなければいけない。


仮に「労働者の技能を高める役割は、事実上企業に一任しよう」という意識があるとすれば、そのような意識は捨て去るべきではないかという考えに共感してくださる方は、もし宜しければクリックをお願いします。
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No title

上の記事には超同意なんですが、一方で教育界の職業訓練蔑視もあると思います。
http://d.hatena.ne.jp/t1mannen/
この職業訓練雑感というブログでその事を何度も何度も書いています。
(フィンランドの職業訓練のレポートものってますよ。)
日本型雇用の研修・OJTに加え日本の教育が職業訓練を蔑視してきた・注目してこなかったのがこの日本の職業訓練制度の現状だといえると思います。


Re: No title

> takeshi さん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>上の記事には超同意なんですが、一方で教育界の職業訓練蔑視もあると思います。
http://d.hatena.ne.jp/t1mannen/

このブログは僕も記事本文で触れましたが、このブログのタイトルは全然気にしていなかったので、まさか「職業訓練雑感」という職業訓練に特化したブログだとは全く思っていませんでした。

>日本の教育が職業訓練を蔑視してきた・注目してこなかったのがこの日本の職業訓練制度の現状だといえると思います。

そうですね、「大学は就職予備校じゃない」という大学関係者もいるらしいですし。そういう人には本田由紀先生著の「教育の職業的意義」を一度読んでもらいたいです。

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Re: No title

> 非公開コメントをくださった方へ

コメント有難うございます。ご紹介いただいたurl、僕も見ました。僕の今回の記事も後者のブログの方への批判といえるのではないでしょうか。「社会人から就活生によく投げかけられる言葉で僕が嫌いなものの一つに"仕事は会社に入ってから覚えていけば良いから、学生時代は遊んでおいたほうが良いよ"というものがある」と僕は書きましたし。


「日本のこれから」という番組で就活がトピックになったのは知っていたのですが、そこで職業訓練についても議論が交わされていたことは知らなかったので、とても勉強になりました。有難うございました。
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