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「既卒者問題フューチャーセッション」に寄せて~第1回「新卒一括採用と企業の競争力」~

来月の8日に、渋谷の鉢山公園で「既卒者問題フューチャーセッション」というイベントが開催される。主催者は、既卒者カフェ発案者の山口宏之さんと、すがや対話工房 ワークショップデザイナーの菅谷宏一さん。大学などの高等教育機関を卒業して就職しないでいる「既卒者」を取り囲む問題について検討し、問題に対する解決策を生み出すことを目的とするイベントである。


このイベントの目玉は「私たちの未来にとって、新卒一括採用はHAPPYなのでしょうか?」というテーマに関する対話の時間。そこでこのブログでは、来月8日までに何回か新卒一括採用の是非を巡る議論を再確認し、イベントの助けとなるようにしたい。なお、山口さんの新卒一括採用に対する考え方は既卒者リレーブログに書かれているので(http://kisotu.xii.jp/modules/blog/?p=106)、その問題意識に沿う形のトピックを取り上げたいと思う。


第1回目は「新卒一括採用という採用方式が、企業の競争力を低下させている」という言説を取り上げたい。山口さんも、新卒一括採用が生産効率性の低さを生み出していると考えているようなので(※なお、この記事における「新卒一括採用」の意味は「大学在学中に就職活動をして内定をもらい、卒業と同時に働き始めるというスタイル」という意味だと思ってください)。


「新卒一括採用という採用方式が、企業の競争力を低下させている」という主張を最も強く唱えている一人が茂木健一郎さんだ。茂木さんは去年の12月に「日本の"新卒一括採用"は、経済合理性がないだけでなく、多様な人材を育むという経済のイノベーションの原理にも反する」、「新卒一括採用は、企業経営という視点から見て、合理性を根本的に欠いている。ジョブズが言う"点"と"点"を結ぶような人材は、むしろ、卒業後諸外国を見てきたり、さまざまな経験をしてきた人から生まれる。羊の群れのように従順に進んでいく人ばかり集めて、どうするというのだろう」、「新卒一括採用のせいで、大学の学生たちは極端な抑圧の空気の中にある。いちばん学問をしたい時にできない。見聞を広めようとしても、就職に不利だからとあきらめる。そのことによる機会費用、見逃されたチャンスは膨大であり、国益に深刻な損害を与えている」と新卒一括採用に宣戦布告している(http://togetter.com/li/221383)。


また、茂木さんは一昨年の10月にも「新卒者と、非典型的なキャリアの人(卒業した後ボランティア活動をしたり、海外活動をしたりした者)の能力は当然異なるのであり、その異なる能力を活かすことが経営力の向上につながる、という判断はあって然るべきなのに、多様な採用をしない。集団発狂しているとしか思えぬ」、「iPhoneのような"ドット"と"ドット"を結ぶ画期的な商品開発は、従順に新卒で就活するような人材だけでは無理である」とつぶやいている(http://kenmogi.cocolog-nifty.com/tweets/2010/11/post-5d80.html)。この主張に対する賛否はともかく、茂木さんの主張に一貫性があることは容易に分かると思う。


茂木さんの主張をまとめると、企業が新卒一括採用という方式で採用活動を進めることで①入社してくる人材が「大学3年生で就活をはじめ、4年生で内定をとる人」に偏り、そこには競争力を高めるために必要なはずの「人材の多様性」が欠けている②学生が「就職に不利になるから」という理由でチャレンジをしなくなり、そのことが理由で人材の質が全体的に下がり、結果として企業の競争力も落ちていく・・・という要約になるだろう。


まず①について。これを補強し得る材料として、猪子寿之さんが安藤美冬さんとの対談で紹介した「寛容性が高ければ高いほど競争力が高くなっている」という統計データが挙げられると思う(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33283?page=4)。猪子さんの発言をもとに少し調べたところ、"Technology, Talent and Tolerance in European Cities: A Comparative Analysis(ヨーロッパの都市の技術、才能と寛容性:比較分析・・・で訳は合ってますかね?笑)"という論文が見つかった。論文を全て読むのは少し面倒なのであきらめるとして・・・(笑)しかし、論文の冒頭でRichard Floridaという人が"The Rise of the Creative Class"という著書の中で、超簡単に訳せば「異なる人種やライフスタイルを持つ人たちにより構成される組織はイノベーションを起こすにあたって好都合です(原文:diverse groups of people of different ethnic, racial and lifestyle groups provides distinct advantages to regions in generating innovations)」と主張していることが触れられているので、それを紹介したい。


一方で「人材の多様性があるために、組織にクリエティビティがある」という主張に疑問を持つ声がある。これは以前書いた「茂木健一郎さんは、自身の"新卒一括採用批判論"に対する海老原嗣生さんの批判を相手にしないと思う」という記事に対する海老原嗣生さんご本人のコメントが該当する。改めて、海老原さんのコメントを紹介したい。

まず、一点目。アメリカの企業礼賛、とりわけ、多様性があるためにクリエティビティがあるという趣旨の話が、私には納得できないことなのです。


茂木氏がいう、iPadと同様に、たとえばWiiは日本発のエポックで(=ゲームを体で楽しむ、家族で楽しむという提案)、また、携帯にインターネットをつなげたのは、アステルの柳田要一さんであり、それを広めたのはNTTの松永真理さんでした。たった10数年の間でも、日本発のエポックはそれなりに生まれています。とりわけ、ネットと携帯の融合という革命的なできごとを日本は主導したのではないでしょうか。そう、こんな感じ。水掛け論になりそうな、そんな類の話だと思ったのです。


問題は二つ目の話。アメリカ発のエポックでかなわないものは多々あります。ただ、それが、アメリカの大企業で起きたか?ジョブスもセルゲイもチャンもザッケンバーグも、アメリカの大企業でそれを成し遂げたわけではないでしょう?みな、若きアントレプレナーとして成功したのだと思います。アメリカの採用方式がいいから、向こうでは大企業でも多様性に富み、クリエイティブな人たちが多々いる、ということとはつながらないと思います。そこ、です。


私は、人材関連誌の編集長をしていたので、アメリカの大手企業には幾度となく取材で赴いてきました。HP,J&J、ボーイング、ステイプラー、IBM、MS・・・・。日本に進出している外資系企業も多々見ています。そのあたりは私の雑誌をご覧いただければ幸いです。


そうした外国企業の内部は、日本とは全く異なるけれども、日本同様の「閉塞感」が感じられていました。彼らの仕事のしかたは、「いかに自分の仕事がすごいか」のアピールが第一であり、次が、「うまくいっている競合他社の研究→物まね→パッケージ化→マニュアル化」でした。アメリカの大手企業の手法、それは会社ではマイクロソフトに代表される上記ルーティンであり、研究者でいえば、マイケルポーターの説くところです。クリエイティブよりも、相手の研究とパッケージ化の達人たちです。だから、アメリカでは超大手で面白い人が育ちにくいのだろう、というのがその所管でした。(日本より実力優先で、若い人にも抜擢があるのは、事実です)。

下手に僕が手を加えて不正確な要約をするよりも、海老原さんのコメントを直に伝えたほうが良いと思ったので、長くなってしまったがそのまま引用した。海老原さんのコメントからは「"従順に新卒で就活するような人材"の集まりでもイノベーションを起こし、ひいては高い競争力を保つことは可能」、「別にアメリカの"新卒一括採用ではない採用方式"が原因でイノベーションが起こっているかと言うと別にそんなことはない」という主張が具体例を交えてなされている。新卒一括採用廃止を唱える根拠として「競争力の低下」を挙げるとすれば、この海老原さんの見解とぶつかることを避けるのは不適切だ。


②については軽く触れる。茂木さんの主張に対して反論するとすれば「確かに卒業後に海外留学に行ったりすることは難しいかもしれないけど、それでもなお在学中に留学するチャンスは残されている。いざとなったら休学すれば、留学しながらも新卒扱いで企業にエントリーできるので、学生の成長の機会が新卒一括採用により失われているとは評価できない」という理屈が考えられるだろうか。


最後に①、②について個人的な意見を。①については海老原さんの話の真偽を判断できるだけの知識が今の僕には無いのではっきりとしたことはいえないのだが、少なくとも「日本企業=新卒一括採用のせいで無個性人材の集まり、海外の企業=新卒一括採用が無いのでクリエイティブな組織の出来上がり」というイメージに安易に飛びついてはいけないと感じた。②については、確かに在学中に自分を成長させる時間はたくさんあるはずだが、それでも茂木さんの言う「非典型的なキャリア」を歩むことによって得られる力を信じたいという個人的な好みがあるので、ぜひ「非典型的なキャリア」を歩んだことで、もし典型的キャリア(卒業後すぐ就職)を歩んでいたならば得られなかったものを得られた・・・という生の声を聞いてみたいと思った。

「新卒一括採用」が企業の競争力を低下させているという言説があること、並びにその言説に対する反論があることを整理できたと感じてくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
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No title

僕は海老原氏が嫌いですがこの意見には賛同ですね。そもそも多様性とは何か?そしてそれは企業の革新につながっているのか、不明だという点から新卒一括採用は創造性のない組織になるという意見には首をかしげます。

ちなみに僕が新卒一括採用に反対なのはシンプルにそれが年功賃金と結びついていて再チャレンジできない、長時間労働といった日本型雇用につながっているから、です。

Re: No title

> takeshi さん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>そもそも多様性とは何か?そしてそれは企業の革新につながっているのか、不明だという点から新卒一括採用は創造性のない組織になるという意見には首をかしげます。

なるほど。「既卒者問題フューチャーセッション」でも「新卒一括採用が創造性のない組織を生み出す」という意見は出てきそうですから、それに対しては「人材の多様性と企業の革新に因果関係あるの?」という突っ込みをすると良いですね。もっとも記事で取り上げたように、この因果関係を肯定する調査もあるわけですが。

>ちなみに僕が新卒一括採用に反対なのはシンプルにそれが年功賃金と結びついていて再チャレンジできない、長時間労働といった日本型雇用につながっているから

後半は、これは現在の就活が「メンバーシップ型採用」で「ジョブ型採用」じゃないから、いつまでもぐだぐだと会社に残らなければいけなくなるという主張ですかね。これも検討すべき要素だと思います。
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