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<書評>育て上げ―ワカモノの自立を支援する(工藤啓著)~社会のレールから外れた若者と、その親の心理を知るためのヒントとして~

図書館で、NPO法人「"育て上げ"ネット」の理事長である工藤啓さんの著書「育て上げ―ワカモノの自立を支援する」という本を借りた。この「"育て上げ"ネット」とは、「若者を"大人になりきれない、若い大人達"として理解し、彼(女)らが、"経験の穴"を埋めていける場をつくり、支援しています」という理念の下、若年者就労支援事業や保護者支援事業、官公庁ソリューション事業などに取り組んでいるNPO法人である(http://www.sodateage.net/aboutus/index.html)。


「育て上げ―ワカモノの自立を支援する」は、主に工藤さんの人生観が記されている「僕の育て上げ」、「"育て上げ"ネット」の活動内容について記されている「他者の育て上げ」の2部構成となっている。


「僕の育て上げ」のパートは全て、「僕にとって、○は~です」という文章から章が始まる。例えば「僕にとって、"夢"は寝ているときに見る映像です」、「僕にとって、"職場"は仕事場であり、遊び場です」、「僕にとって、"時間"とは無限にあり得る有限資源です」などなど、工藤さんの物事の捉え方がひたすら記されている。正直このパートは、工藤啓さん「個人」に関心が無いと読み進めるのが少しキツいかもしれない。そして僕はそこまで興味が無かったので(笑)、このパートはさらっと流し読みをするに留め、後の「他者の育て上げ」の方を重点的に読んだ。


「他者の育て上げ」には、「ワカモノの自立を支援する」、「ジョブトレ、それは自立のための支援プログラム」、「若者と親と社会の関係」など、「"育て上げ"ネット」の活動、並びに活動を通じて関わるに至った若者・親などがどのような想いを抱いているのかが記されている。例えばジョブトレの実施に際しては、「"育て上げ"ネット」にやってくる若者は長期にわたって仕事や共同作業の機会から離れているためにそうした営みに不安を抱えていて、ゆえにまずはそうした不安を解消出来るような機会を提供することを意識している・・・など、「"育て上げ"ネット」が実施するプログラムの趣旨・狙い、並びに若者の心理などを知ることが出来る。


個人的には、中々働けないでいる若者の「親」の心理を表現した箇所が特に勉強になった。というのも、以前「親のこんな言動で就活生は傷ついている」という記事を通じて、「現在の就活事情をろくに知らないで子を非難する親と、そのような親に苦しめられる就活生」という構図が存在するかのように書いたのだが、こうした構図を定立することが妥当でない場合の具体例を知ることが出来たからである。


親は親で悩んでいるだろうことはさすがに想像できたが、その「悩み」の具体例はあまりイメージできていなかった。しかし本には、例えば、自分の子が就職できない状況下に置かれることで、他者とのつながりを無くしていくケースなどが載っていた。どうやら同世代の子を持つ親同士の会話で話題になりやすいのは、「子供が卒業した大学」、「働いている会社」、「結婚や子供の有無」という子供に関するトピックらしい。しかし、ここで家に引き篭もっている子供を持つ親はそうした会話において、「自分の子供は、自宅で出来るような仕事をしている」とウソをついたり、「フリーターのようなものをしている」と話をぼやかしたりするしか会話を乗り切る術はない。そして、子供のことをあまり聞かれたくない親は、子供のことが会話のトピックになることが多いコミュニティから離れて孤立化する道を選ぶ場合もあるとのことだ。


工藤さんは親を対象にした「親ゼミナール」というものをやっているらしいが、その参加者の特徴として「開催地付近に住んでいる人たち」の参加が少なく、むしろ電車で1時間以上かけてやってくる方々が多いと著書に書かれている。これも親たちが、地元で開かれるセミナーだと知り合いに会ってしまい、自分の子供の状況を知られてしまう可能性を危惧し、自分や子供のことを知らない人たちと悩みを共有したいと考える傾向が強いからだ。子にキツくあたる親の中には、その親の人間性に問題があると言うよりも、人と関わる事を恐れることによって生じる精神的ストレスの方が理由としては大きいのかもしれない。


工藤さんは「これまでずっと自責の念と他者の目に苦しんできた親が求めているのは、安心できる環境で、同じ悩みを共有できる"まったくの他者"との交流と、子供への"具体的な対応策"である」と述べているが、これは既卒者カフェが備える特性と通じるところがあると感じた。以前、「就活生だけでなく"親"をも食い物にし始めた就活コンサルタント」という記事で「就活生の親」を対象にした、子供を就職難民にしないためのセミナーを紹介したが、こうしたセミナーの存在よりも既卒者カフェの親バージョンみたいなものが出来るほうが、精神的に苦しむ親の気持ちを楽にするのではないかと想像する。


勿論、工藤さんが接している若者・親が全てではなく、工藤さんも本の中で「若者」を一括りにして論じる危険性を指摘する。ゆえに、読者としても「若者や親はこんな風に考えているのか」と安易に結論に飛びついてはいけない。しかしそれでも工藤さんが示す具体例を、社会に定着する一般的なレール(学校から社会に滞りなく移行する)から外れた若者、そしてその若者の親ががどのような思いを抱えているのかを考えるヒントとして活用する分には問題ないと思う。特に若者支援に関して問題意識を持つ人にとっては、得るものが大きい1冊だと感じた。

就活生を非難する親も、実は精神的に追い詰められている場合があるという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
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No title

既卒者カフェの親バージョン、7月くらいに本気で考えました。

ただどうやって人を集めたらいいかよくわからないので、置いてあります(笑)

Re: No title

> 既卒者カフェ山口 さん

ブログではお久しぶりです、コメント有難うございます。

>既卒者カフェの親バージョン、7月くらいに本気で考えました。ただどうやって人を集めたらいいかよくわからないので、置いてあります(笑

ですよね。僕も「親とか、そんなツイッターとか見てるのかな」と思い、人集めが難しいなという結論に至りました(笑)今は既卒者に「既卒者カフェ」を通じてリラックスした時間を送ってもらいながら、可能ならば「親に、どうしてもらいたいのか」「親にどういうことを言ってもらいたくないのか」というニーズを聞き出すことに専念するのが良いかと(勿論、言いたくない参加者からは無理に聞き出さない)。その上で機会に恵まれれば、既卒者カフェにおけるヒヤリングを生かして、親向けの集まりを開ければ・・・。
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