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「就活生は大手企業への入社を望み、中小企業への入社を敬遠する」という語り口の限界

「大手企業はともかく、中小企業には求人がある」という前提に基づき、就活生の目を中小企業に向けさせる必要性を説く論者として、海老原嗣生さんや常見陽平さんが挙げられる。勿論、誰もが大手企業に入社できるわけではないことを鑑みると、彼らが掲げる方向性は適切なものだ。しかし、彼らの著書を読んでいると、就活生を中小企業に誘導しようとするために、時に妥当性に欠ける雑な主張をしていることがあるように感じられる。その一つが、「中小企業で働いた後に、実力さえあれば、第二新卒採用で大手企業に入れる(だから、中小企業であってもとりあえずは入社してみるべき)」という主張だ。


海老原さんは著書「就職、絶望期」において、労働政策研究・研修機構が2005年に発表した「第二新卒者の採用の実態調査」のデータを引用した上で、「従業員1000人以上の大企業の過半数が第二新卒採用を行っていること」、「従業員数5000人以上の超大手企業に採用された人のうち、半数以上が従業員数300人未満の中小企業の出身者であること」、「従業員数1000人~4999人以上の大手企業でも、採用者の49.3%が従業員数300人未満の中小企業の出身者であること」を主張している。海老原さんは「全員が希望通りの大手企業に入れるわけではない」という補足を挿入しながらも、一度中小企業に入社しても大手企業に入れるチャンス自体は存在することを論証したのである。なお、常見さんは「一度中小企業に入っても、その後に大手企業に転職することは可能だ」とはっきりと言ったわけではないと思うが、著書「くたばれ!就職氷河期」にて「どんな業界であれ、企業であれ、正社員で就職できていれば、好況期に転職できる可能性はある」と述べており、これは海老原さんの主張と重なる点があると評価して良いのではないかと僕は感じている。


この主張のどこに違和感を覚えるか。それは、「就活生が就職先を選ぶ際に"従業員数"をそんなに考慮しているのか」という点だ。勿論、就職人気ランキングでは上位に大手企業の名前がずらりと並んでいるわけだけれど、就活生が求めているのは「企業規模」「従業員数」自体ではなくもっと別の要素であり、その要素を備えている傾向が強いのが大手企業というだけの話なのではないか。即ち、「一度中小企業に入社しても、従業員数5000人以上の超大手企業に入社できますよ」というような単純に「従業員数」に着目したアナウンスは、就活生が本当に求めているニーズに大して応えていない可能性がある。


例えば、「絶対に就職したくない企業ランキング」の常連ともいえるモンテローザ。そのホームページを見ると社員数が2873名であることが分かり(http://www.monteroza.co.jp/monte/company/company.html)、これは海老原さんがいう「大手企業」に該当する(上で述べたように、海老原さんは従業員1000人以上の会社を"大企業"と見なしているので)。しかし、普通に考えて「中小企業に入社しても、その後社員数が2873名の大手企業、モンテローザに入れる可能性はありますよ!」と言われて喜ぶ人なんているのか。勿論モンテローザの仕事そのものは意義があるといえるが、募集要項にある「勤務時間 15:00~翌5:00」という記述を見たら、大概の人は応募をためらうと思うのだが・・・。


同じような例として、「ワタミ」も挙げられる。ワタミだって従業員数だけでいえば、グループ計で5730名いる(http://www.watami.co.jp/corp/gaiyo.html)。しかし、新入社員が過労自殺した事件そのものやその後の会社の対応を鑑みると、「従業員数5730名の超大手企業、ワタミに第二新卒で入れますよ!」と言われて希望を抱く人なんているのか。俗に言う「大手病」にかかっている人であっても、さすがに「ワタミ」は敬遠するんじゃないかと思うのだが・・・。


以前、「の」さんが「そもそも内定を貰えない人が渋々行かざるを得ない"ブラック企業"って、単に規模だけ小さい企業じゃなくて規模は大きいが業種として厳しい(外食や小売等)企業をさすのではないかと」とコメントをしてくださった(http://lingmu12261226.blog10.fc2.com/blog-entry-320.html)。このコメントを読んで、「就活生は大手企業への入社を望み、中小企業への入社を敬遠する」という語り口には限界があると僕は感じた。例えば、テレビで放送された新人研修が話題になった王将フードサービスの従業員数は1938名と「大手企業」といえるレベルのものだが、新人研修で絶叫していた新入社員の一人は「自分は50社、60社以上受けてきましたが、王将フードサービスが唯一の内定先です!自分を拾ってくれた、掴まえてくれた、そういった方々に全力でこれから恩返しします!」と言っていた(ただの、テレビの演出かもしれませんが)。つまり、企業規模が大きい「大手企業」であっても就活生がそこへの入社を望んでいるかというと必ずしもそうではなく、なかなか内定をもらえなかったがゆえに(失礼だけど)仕方なく入社するという場合もあるということだ。


恐らく、そういう類の「大手企業」に第二新卒で入社できますよとアナウンスされても、大半の人は「それだったら、中小企業に残りますよ」と思うのではないか。そして上で触れた、海老原さんが引用した「第二新卒者の採用の実態調査」だが、その調査に答えた2497社の属性として2番目に多かったのは、業種として厳しい傾向が高い「卸売・小売業」で15.7%だった(1番多かったのは「製造業」で25.1% http://www.jil.go.jp/institute/research/documents/003/research003-2.pdfの29ページ目参照)。これを踏まえると、海老原さんのアナウンスを鵜呑みにして第二新卒での大企業への転職を期待することは少々危険なのではないかと思える。


別に海老原さんは嘘を言っているわけではない。また、そもそも「新卒の時大企業にいけなかったんだから、身の程を知って、自分を雇ってくれた中小企業で必死に頑張れよ」という見方もあるだろう。その見方自体は一定の正しさを含んでいると思うけれど、それを置いておいて海老原さんのアナウンスを純粋に評価しようとすると、どうしても「コレジャナイ感」を感じずにはいられない。最近僕の中で、「海老原さんは、これまで僕がブログで書いてきたようなことは既に分かっている。分かった上で"就活生を中小企業に誘導する"というゴールから逆算して、それに都合の良い形でデータを表示しているのではないか」という疑問が浮かんでいる。「一度中小企業に入社しても第二新卒で大手企業に入社できるかもしれないけど、その"大手企業"の業種は外食や小売かもしれないよ」とアナウンスしてしまったら、就職留年してでも「待遇が良い」「内定を取ることそのものがステータスになる」大手企業に入ろうとして中小企業を敬遠する就活生が増えるかもしれないし、そうならないためにも海老原さんは中小企業に入社することの希望を多少無理やりにでも語ろうとしているのではないだろうか。


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No title

前回に続いて、すばらしい記事ですね。
常見さんをネタ要員認定してから一皮むけた感じです。
また、すばらしい記事にはすばらしいコメントがついているので、私なんぞ出る幕じゃないのですが、すばらしいと思う人間が1人でも多くいるとわかってもらえたほうが励みになるかと思って。

海老原さんについては、中央公論の記事を全部読みましたが、10年くらい前にNHKのニュースでやっていた中小企業と就活生のミスマッチとまったく同じことを言っているので驚きました。この10年の間に、優良中小企業は人材を確保できるようになっているはずで、そうなると、ブラックな中小企業に誘導しようとしてるのか、と思われてもしかたないですね。
この種の論客は、世の中の不満にスケープゴートを提供することで人気を得ている印象があります。

Re: No title

> ななしさん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>常見さんをネタ要員認定してから一皮むけた感じです。

有難うございます。ここのところ堅い記事が続いているので、そろそろ常見さんをネタにしようかなと思っていたのですが(笑)、どうしよう・・・。

>海老原さんについては、中央公論の記事を全部読みましたが、10年くらい前にNHKのニュースでやっていた中小企業と就活生のミスマッチとまったく同じことを言っているので驚きました。この10年の間に、優良中小企業は人材を確保できるようになっているはずで、そうなると、ブラックな中小企業に誘導しようとしてるのか、と思われてもしかたないですね。

そうなんですか!後藤和智さんも「海老原が"中小企業に限れば求人は多い"という言説を先導してきたということもあり、単純な"量"ばかり問題視し"割合"や"質"に関してはほとんど触れていない可能性が高い」と評価していますね。海老原さんは「ブラック企業」対策の提言も一応しているわけですが、後藤さんのように評価する人がいても全然おかしくないだろうなと個人的には感じました。

No title

今も就活を続けています。(周りから色々言われています)

en JAPAN でも、何通もモンテローザのメールが届くんですよね
ググれば、ブラックって出ますし(汗)  私も行きたくないです。

大企業だの、中小企業だの言いますが、従業員だけでなく、資本金も定義に含まれていたので
何ともいえません。が、

中小企業に限れば求人は多い

       ↓

大手は、早いうち(1月~4月)に採用活動を始めるから、
残るのは中小ばかりのような気がします。
(とはいっても、ゼリア新薬のような大企業は今もやってましたけど)

この時期は、中小を受ける機会が多いと思うので、
中小企業には求人があるというのは、本当のことかもしれません。

それでも総内定率は低いのだから、
無責任な言葉に聞こえます。

No title

海老原さんの言っていることは
上位大学向けとしてはすごく正しいんですよ。

”上位大学の”就活生は大手企業への入社を望み、中小企業への入社を敬遠する

とか枕詞に上位大学をつければ海老原さんの主張の大半は違和感はない

平時なら有名企業に行けるクラスの人が
不況時に優良中小入って、後で転職するのはいい手

もともと平時でも優良中小に入れれば御の字の下位大学の人には全く意味のないアドバイスですが。

大学と一括りでアドバイスするのは難しいので
上位と下位でアドバイスを分けるのが適切かと

No title

従業員数や規模が多いから志望するのではなく、従業員数や規模が大きいところは給料や福利厚生などを含めた待遇が良い場合が多いから志望すると思うので、その通りだと思います。
実際、lingmuさんの挙げている企業は転職サイト等でも常連と言う印象があります
というより、今も新卒サイト、転職サイトの両方で募集中のようです。

この調査では回答率が20%台ですが、果たして残りの8割は当然採用しているから回答しないなのか当然採用しないから回答しないなのかのどちらかによってまた考え方は、変わってくると思います。
2004年4~6月に調査をし2005年発表のアンケートという事から、恐らく2004年や2003年、2002年辺りの第二新卒採用実績だと思うのですが、その頃の有効求人倍率(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001102272)を見るとどうしても後者なのではと思ってしまいます。
また、この調査では何人採用したかが記載されていないわけですが、その点も疑問に思います。
採用人数が1人なのか10人なのかで大きく変わってきますし。
第三章のヒアリング調査結果のp.68を見てみるといくつかの企業の事例が載っていますが、若干名等少人数の採用と答えている企業が多いのも気になります(私が見落としているだけで、他に採用人数について言及されている部分があるのかもしれませんが)

Re: No title

> PIROさん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>en JAPAN でも、何通もモンテローザのメールが届くんですよね。ググれば、ブラックって出ますし(汗)

あ、「ググれば、ブラックって出ますし」というのは今度記事で書こうと思っていたことです。会社名を検索してみようとしてみて「ブラック」が候補に出てきたら、就活生がその企業に応募を躊躇うのも無理は無いと思うのです。

Re: No title

> チョコたんさん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>大学と一括りでアドバイスするのは難しいので上位と下位でアドバイスを分けるのが適切かと

実際、企業が特定の大学をターゲットにして採用活動をする「ターゲット採用」と言う言葉もあって、その対象になるのは恐らく上位校のみでしょうから、「上位と下位でアドバイスを分ける」というアプローチは確かに一理ありますね。

>もともと平時でも優良中小に入れれば御の字の下位大学の人には全く意味のないアドバイスですが。

残念ながら、そうかもしれませんね。まぁ、全ての人に通じるアドバイスをするというのは無理でしょうから、この点ではさすがに僕も海老原さんを責められないですねー。

Re: No title

> 11卒業務未経験無職 さん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>この調査では回答率が20%台ですが、果たして残りの8割は当然採用しているから回答しないなのか当然採用しないから回答しないなのかのどちらかによってまた考え方は、変わってくると思います。
2004年4~6月に調査をし2005年発表のアンケートという事から、恐らく2004年や2003年、2002年辺りの第二新卒採用実績だと思うのですが、その頃の有効求人倍率(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001102272)を見るとどうしても後者なのではと思ってしまいます。

相変わらず、鋭いですね(笑)海老原さんは本で「調査をした時期は採用・雇用環境が厳しかった訳だけれど、そのような時期でも多くの企業が第二新卒採用を行っていた」と言っているのですが、アンケートに回答しなかった会社の思惑まで踏まえて考えると、海老原さんの論調はどうなのかなと思うところは確かにありますね。

>また、この調査では何人採用したかが記載されていないわけですが、その点も疑問に思います。採用人数が1人なのか10人なのかで大きく変わってきますし。

後で、第三章のヒアリング調査結果のp.68も含めて、この点を確認してみようと思います。
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