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「やりがい搾取」に歯止めをかけるための予防的措置の必要性

先月の30日に、ブロガーのイケダハヤトさんが「若者よ、"やりがい搾取"に気をつけろ」という記事を書いていた。「やりがい搾取」は、前からずっと本田由紀先生や常見陽平さんらが問題視しているトピックであり、そしてイケダハヤトさんの記事の内容も殆ど従来の議論の紹介に留まっているので、特に目新しい発見は無い。記事の最後の方に「今後、"やりがい搾取"という形の新しいブラック企業も登場してくるように思います」と書かれているけれど、そういう企業はとっくに登場している。


「やりがい搾取」は恐らく本田由紀先生が言い出した概念だ。これと似たような概念として、阿部真大先生が提唱した「自己実現系ワーカホリック」というものがある。これは、特に若者がサークル的・カルト的な「ノリ」の中で、自分の「夢」や「成長」を目指して、結局は働きすぎに巻き込まれる状態のことを指す言葉。そこで本田先生が「自己実現系ワーカホリック」とは別に「やりがい搾取」という概念を生み出した理由としては、「自己実現系ワーカホリック」という言葉は個人的な動機を強調しているように思えるが、実は企業の側が若者を搾取するために若者が「自己実現系ワーカホリック」に陥りやすい構造を作り出しているので、そうした状況を言語化するためであった。


もしかすると「"自己実現系ワーカホリック"という言葉は個人的な動機を強調している」という記述を分かりにくいと感じた人がいるかもしれない。ここでいう「個人的な動機」とは、労働者自身が自らの意思で「この仕事にはやりがいがあるから、長時間労働や低待遇なんてことは気にならない」という動機付けに走ることを意味する。これを強調すると、「労働者である本人が"別に働きすぎでも良い"と言っているのだから、それで良いんじゃないの?」という反論を招く危険性が生まれる。ゆえに本田先生はその危険性に警鐘を鳴らし、一見労働者が自発的に長時間労働などの条件を受け入れているように見えても、その労働者の意思は企業により左右されている・・・という構造面の問題を指摘したのである。常見陽平さん著の「僕たちはガンダムのジムである」にもこの問題を指摘する箇所があるので、興味がある人は立ち読みしてみると良いかもしれない(購入は薦めません笑「常見さんが嫌いだから」とかではなく、内容的に本当に立ち読みで十分だと思います)。本を買うんだったら、本田由紀先生の「軋む社会」の方が明らかによく、ここまでの記述もこの本を参考にして書いています。


さて、イケダハヤトさんは記事で「社会的意義を感じて入った会社が、実は搾取だとしたら、かなりショッキングです。見分け方についても考えてみました」とも述べ、「"やりがい搾取"の見分け方」を6つ紹介している。僕はイケダハヤトさんのことはそれほど嫌いではないけれど、正直この6つの内容は個人的にはかなり抽象的だと感じられたし、且つ「やりがい搾取」をしてくる会社に入った人が「自分は"やりがい搾取"をされているのか?」という問題意識を抱くのかという点にも疑問を抱いた。


なぜなら、イケダハヤトさん以前に阿部先生や本田先生が「やりがい搾取」をしてくる会社の特徴を4つ抽出しているのだが、その中の一つに「サークル性・カルト性」が挙げられているからだ(ちなみに残り3つは①趣味性②ゲーム性③奉仕性)。これは「仕事の意義についてハイテンションな、しばしば擬似宗教的な意味づけがなされ、時には身体的な身振りなどをも取り込みながら、高揚した雰囲気の中で、個々の労働者が仕事にのめりこんでいくようなケース」のことであると説明されている。その具体例としてある居酒屋チェーン店が挙げられているのだが(「海外ニートさんの"仕事なんてクソだろ?job is shit!"という言葉を忘れないでいたい」という記事で、そのチェーン店の動画を紹介しましたので宜しければ)、そういう状況下に置かれている労働者が自分の待遇に疑問を抱くことは難しいのではないかと僕は感じている。


本田先生は「やりがい搾取」に基づく「働きすぎ」の拡大を防ぐための策として、「やりがい搾取」がなされる「からくり」を明るみにした上で、職場や職種という集団単位でその行き過ぎに歯止めをかけるという、本田先生自身「凡庸な提言」と認めるものを提出した。確かにこの提言の内容自体は正しいけれど「そう簡単に"行き過ぎに歯止めをかける"ことが出来たら苦労はしないよね」ということを本田先生は恐らく分かっている。


企業からしたら「自己実現系ワーカホリック」に走る労働者の存在は都合が良いから、それを減らそうとは考えない。また、労働者に「あなたのモチベーションは、実は企業が巧妙に生み出したものなのです。あなたは搾取されてるんですよ」と言っても「はぁ?こっちは本当にこの会社が好きで長時間の仕事に取り組んでいるんだ!」と返されるのがオチだろう。極端な話だけれど、akbのメンバーに「秋○さんに搾取されているんじゃないですか?」と言ったらすごい勢いで怒られそうだ。「やりがい搾取」がなされる「からくり」を明らかにしたところで、それで「あぁ私は、"私の夢"を企業に利用されて搾取されていたのか」と受け入れられる人はあまりいないのではないかと思う。


このような考えから、「"やりがい搾取"をしてくる会社に既に入社し、その環境に満足している労働者」に対しては、僕としてはもうお手上げである。僕が思うのは「予防的措置」、つまり就活中・就活前の段階にて各人に「やりがい搾取」という概念を周知させることの必要性に留まる。例えば僕は、会社説明会で実に感動的なムービーが流れて「おぉ、この会社だったら長時間労働でもいいや!」と思ったことがあるけれど(笑)、そういう「サークル性(悪く言えば「カルト性」)」に安易に飛びつかないことの必要性はアナウンスしても良いのではないかと思う。というか、「就活」そのものが「サークル性・カルト性」の塊と言ってもそれほど言い過ぎではないし、それが企業が「やりがいの搾取」をすることを容易にさせていると思うのだが、「やりがい搾取」の危険性を指摘しながら現在の就活事情をかなり肯定している常見陽平さんは一体どのような考えを持っているのだろう。僕なんかは「"やりがい搾取"の危険を減らしたいなら、エントリーシートの”あなたにとって働くとは何か"とか、就活生に"働くことの意味"を過大評価させるような設問を批判しなければいけないだろう」とか、そういうことを考えてしまうのだが。


「やりがい搾取」に歯止めをかけるための予防的措置を講じることが必要だという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
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はっきり言って詐欺だよね。

よく「好きな(やりがいのある)仕事してるんだから給料少なくてもかまわないでしょ」なんて言う人いるけど根本的に勘違いしてるよね。

例えばアイドルは誰もが憧れる職業だけど、厳しいレッスンをこなさなきゃならないし、見知らぬ大勢のファンと握手会などで触れあわなければいけないなどつらい事を沢山経験する必要がある。

決して「好きな仕事=楽な仕事」ではない。

とても好きな仕事ならそれなりにとてもつらい事も付いてくる。

好きだからこそ給料はもっと多く払われるべきだと思う。

No title

やりがいがある(=仕事をたくさんやらせる)
大きな仕事ができる(=難しい仕事でも無理してやらせる)
自分の成長のために(=成長させてあげるんだから給料いらないでしょ)
裁量労働(=奴隷労働)

という事だと思ってる。
中で働いている人はこういう意識がない人も多いし、実際に就職してみないとわからないところが厄介ですよね。

Re: タイトルなし

> 雨宮 さん

>よく「好きな(やりがいのある)仕事してるんだから給料少なくてもかまわないでしょ」なんて言う人いるけど根本的に勘違いしてるよね。

会社だけでなく、NGOとかNPOにそういう傾向がありそうですね。まぁ、NGO・NPOがその職員に多くの給料を払えないのは、単純にお金が無いからという理由な気がしますが。良い仕事をしている人に多くの給料が支払われるのが望ましいですが、話はそう単純ではないのでしょう。

Re: No title

> naoki さん

はじめまして、コメント有難うございます。

>やりがいがある(=仕事をたくさんやらせる)
大きな仕事ができる(=難しい仕事でも無理してやらせる)
自分の成長のために(=成長させてあげるんだから給料いらないでしょ)
裁量労働(=奴隷労働)

なるほど。その他に、企業が人々の「人の役に立ちたい!」という奉仕性に付け込んでいるという事情が大きいと考えています。一括りには出来ませんが、日本人は特に就活を通じて「仕事を通じて、人の役に立ちたい!」という気持ちを強くする傾向があると思います。そこにつけこめば労働者は「仕事は大変だけど、私は人の役に立てている!」という気持ちを持って働くことで喜んで長時間労働などに服し、それが企業にとっては非常に都合が良い・・・という構造があるのではないかと。

>中で働いている人はこういう意識がない人も多いし

もう「たくさん働いて、もっと人の役に立つぞ!」という考えに洗脳されてしまっているんでしょうね・・・。

No title

本田由紀先生のツイッターから来ました。

海外ニート氏、懐かしいですね。あの方にはお世話になりました。海外ニート氏啓蒙活動は無事に実を結んでいますね。

やりがい搾取と言えば、こういうツイッターまとめがありましたね。

>お菓子っ子さん @sweets_street による「社会に必要とされない人々の自尊心の問題」
http://togetter.com/li/380845

自分はネトウヨですが、もしかしたら社畜もネトウヨと同じような精神構造なのかもしれません。

承認欲求や自尊心や人間の尊厳を国家や会社でしか満たせないのかもしれませんね。

>ヒーローを待っていても世界は変わらない

湯浅 誠
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=14122

この本の中で、日本社会は今も「社縁」重視の価値観が強すぎると。

「社縁」でしかコミュニティを形成できず、「労働」だけでしか、自尊心や承認欲求や人間の尊厳を回復、守り、満たすことができない日本社会や日本国家が異常と思います。

Re: No title

> シント さん

はじめまして、コメント有難うございます。

>本田由紀先生のツイッターから来ました。

最近本田先生が僕の記事を取り上げてくださるので、それが刺激になっています。

>海外ニート氏、懐かしいですね。あの方にはお世話になりました。海外ニート氏啓蒙活動は無事に実を結んでいますね。

あの人の問題提起、文章力は半端じゃ無かったですよね(笑)僕もいつも楽しく記事を読んでいました。

>>お菓子っ子さん @sweets_street による「社会に必要とされない人々の自尊心の問題」
http://togetter.com/li/380845 (中略)「社縁」でしかコミュニティを形成できず、「労働」だけでしか、自尊心や承認欲求や人間の尊厳を回復、守り、満たすことができない日本社会や日本国家が異常と思います。

特に、「そのような経営者の企業で張り切っている労働者に"君は搾取されているだけだ"と言って、いかに労働環境が異常であるかを説いても意味が無いです。彼は"現時点において自分を必要としてくれると感じているから働いている"のであって、"構造的に正しいから働いている"のではありません」という指摘は秀逸だと思いました。

No title

はじめまして。ブログの記事をしょっちゅう拝見させていただいてます。私自身現在大学4年で、就活を経験しました。ただ、私は公務員志望で、今現在、最後に受けた市役所試験の結果待ちです。今のところ、内定はありません。

このブログ内でも少し触れていたと思いますが、確かカルト的、サークル的なノリで、夢や希望を語るような企業もあると書かれてましたよね。実は、数少ない民間の就活で、知り合った人から来た話でまさにそのようなものが…
確か、4日間のプログラムで、受講生(全て新卒)同士でひたすら自分の夢について語り合い、最終日に全受講生の前で発表する、というものだったと思います。企業の名前も覚えていますが、一応伏せておきます。その人は、それに参加して物凄く刺激になった、とか成長できたと言っていましたが…

簡潔に僕の感想を言うと、クソの極みとしか思えませんでした。そもそも、僕は夢を語れるようになったことのどこが成長なのだろう?と考えてしまうのです。夢を実現するために、どうすべきかを自分で考え、行動して、その結果他者から見て、以前と変わった、と思われて初めて成長なんじゃないかと私は思うのです。もちろん、考え方が変わるというのも成長と言えるでしょうが、夢は夢であって、それを語れることが成長なのかは甚だ疑問です。ちなみに、このセミナーは参加費4万円+1次選考を兼ねているそうです。しかも、3回くらいはチャンスがあったような…
企業側としては、
成長した姿を見せて、挑戦を心待ちしています!(建前)
金儲け(本音)
な気がしてなりません。

管理人さんは現代の茶番と化した就活において常套句である、『成長』ってどういうことだとお考えですか?

そして最後にもう一つ、私にはどんな記事を読んでも、どれだけ考えても、何を持って『優秀』な人材かが新卒ではわかりません。経験者採用なら、具体的に以前の仕事で成し遂げた実績、役割で判断がつくのでしょうが。いつか、この『優秀』という、一見明確そうに見えて曖昧な採用基準に関してもお考えを聞かせていただきたいな、と思います。

長文、大変失礼いたしました。このブログは個人的には大変勉強になります。差支えなければ、私からもこのブログの存在を広めたいとも思っています。
今後も、ブログの更新を楽しみにしております。

Re: No title

> ponta さん

はじめまして、コメント有難うございます。

>簡潔に僕の感想を言うと、クソの極みとしか思えませんでした。

このセミナーは、噂では聞いたことがあります(笑)多分会社名は「ア」から始まり「ト」で終わるものだと僕は思っております。

>管理人さんは現代の茶番と化した就活において常套句である、『成長』ってどういうことだとお考えですか?
「世の中、自分の思い通りにいかないものなんだ」ということを肌で感じることが「就活における成長」だと思っています。冷めすぎですね(笑)でも、少なくとも「夢を語れるようになったこと」自体は成長でもなんでもないと思います。このセミナーにも良い点はあるのでしょうが、こんなセミナーで4万は高すぎます。ただのぼったくりでしょう。

>差支えなければ、私からもこのブログの存在を広めたいとも思っています。

ぜひ広めてください!(笑)
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