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「ブラック企業を何とかせよ」と言うけれど、そうは言っても労働基準監督官の人数が全然足りない

論者の海老原嗣生さんは「就活生を、ブラック企業を含む中小企業に誘導する」という主張を掲げる人だと認識されがちだが、当の海老原さんとしては「いつの時代でも(特に近年!)多くの人が結局、雇用されることになる"中堅中小企業"への、安心で納得のいく就職の仕組みを作るべきだと考えています。"中小に押しつける言説"とは切り捨てないでいただければ、うれしい限りです」との立場を示している(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-93e3.html)。


事実、海老原さんは「四大卒も中小企業を目指せばいい」という論考の中でブラック企業の存在について触れている。具体的には、若者が中小企業に目を向けなくなる大きな原因の一つに「ブラック企業」の存在が挙げられるとの現状認識を示し、その上で「新卒版労基署を作り、ブラック企業に対する駆け込み寺とする」という提案をしている。ちなみに、この主張は海老原さんの最新の著作「雇用の常識 決着版"本当に見えるウソ"」にも書かれていて、海老原さんの立場の一貫性が感じ取れる。


この海老原さんの主張の方向性に異議を唱える人は、恐らくいないと思う。強いて言えば、疑問点として「既存の労基だけじゃなくて、わざわざ"新卒版労基署"というものを作らないといけないの?」というものが浮かび、また懸念事項として「新卒版労基署を作るための条件は、果たして整っているのか?」というものが浮かぶくらいである。そして、この懸念事項の存在を裏付ける新聞記事を最近見つけた。


東京新聞は、今月の5日に「労働者保護、人手足りず 監督官1人に3000事業所」という記事を掲載した。ここでいう「監督官」とは労働基準監督官のことで、長時間労働や労災事故など不当な労働条件の改善を指導する役割を果たす。そして東京新聞の計算によると、大手企業の本社が集まる中央労基署では1人の職員につき約3600の事業所を受け持っているという結果が出て、且つ最も負担の軽い亀戸労基署でも1人で約2300の事業所を担当していることも明らかになった。


もっとも東京新聞の計算が正確かどうかは分からないわけだが、労働基準監督官の人数の少なさという課題は湯浅誠さんも指摘していることだ。湯浅さんは先月23日にNHKハートネットTVで放送された「貧困拡大社会 若者を追いつめる"ブラック企業"」において、「労働基準監督官という人、とてもじゃないが人数が全然足らない。国際的に見ても労働者数に比して、配置割合が低い。チェックもできない」と発言している。ここでいう「国際的に見ても労働者数に比して、配置割合が低い」という箇所については、東京新聞も「適切な労働監督行政には労働者1万人当たり監督官1人が必要という目安をILOは示している。ドイツなどはクリアしているが、日本はほど遠い水準。人員削減が続き、行政本来の目的が果たせない由々しき事態が進んでいる」と同様の指摘をしている。


僕を含めて「ブラック企業を何とかしなければ」と主張する人は少なくないが、その主張を実現するための基本的な条件が全く整っていないことを今更ながら注視すべきだと感じる。凡庸な提言だけれど、やはり端的に「労働基準監督官の数を増やす」という策を講じる必要があるのではないだろうか。こうした提言は「公務員バッシング」に勤しむ人からは反発を受けそうだけれど、濱口桂一郎さんが自身のブログで述べたように「味噌も糞も一緒くたにしたような公務員ケシカラン論が、本当に必要な機能は何かという腑分けした議論すら許さないまま、労働基準監督機能のひたすらな縮小をもたらしている(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-942b.html)」という事情を確認し、及び「本当に必要な機能にはきちんと人員を投資しよう」という発想を持つことが必要だと思う。


労働基準監督機能が向上することは、労働者だけでなく就活生の利益にもなる。海老原さんは「中小企業の場合、開き直られたら、従業員は泣き寝入りすることになるのではないかと(就活生が)心配になるのもよくわかる」と述べているが(そういう事情を分かっていながら、なぜリクルートワークスの数字を根拠に「求人はある」という主張をされているのか、僕には全然分かりませんが)、こうした心配を取り除けるというメリットも見出せるだろう。もしかすると「労働基準監督官の増員」は、就活デモなどで訴えても良い事柄なのかもしれない。今年も勤労感謝の日にやるみたいですし。


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No title

僕の知人に以前働いていた会社と給与未払いで係争中の人がいます。労基署と裁判所に掛け合って、前の会社の社長には督促などありとあらゆるあらゆる勧告を行ったらしいのですが、社長が勧告を一切無視し、それ以上事態が進展しないと滅入っていました。(話を聞いたのが半年程前なので、今は何か状況が変わっているかもしれませんが)

未払い分の給与は国?から補償されるらしく、"財政的"には問題は解決したようなのですが、その知人は「踏み倒した者勝ちのシステムになっている。経営者が給料を払えない責任を取らず、国に税金でケツを拭いてもらうのはおかしい。」と憤っており、その社長が然るべき責任を果たすまで追及を止めるつもりはないそうです。

その後機会があって労働関係のトラブルを専門にしているある弁護士の方の講演を聴くことがあり、質疑応答の際にこの知人の事例を出して「こういった踏み倒した者勝ちのような事態が起きる原因は何なのか?労働基準監督官の権限が弱いからなのか?」という質問をさせて頂きました。その弁護士の方の解答は「労働基準監督官には充分な権限が認められているが、仕事で関わっている監督官などはやるべきことをやらない。法的に認められている権限がどうのという話ではない。」というものでした。

この話からは労働基準監督官がやるべきことをやらない理由が何なのかまでは分かりませんでしたが、案外"人手不足で忙し過ぎるから"といった単純な理由なのかもしれませんね。



話は変わりますが、僕はもちろん労働基準監督官の増員には大賛成なんですが、先日一緒に飲んだ司法試験浪人中の友人の話が頭に引っ掛かっています。それは「ロースクールを卒業すれば弁護士になれるかのような喧伝をした当時の政府や、司法試験の合格率が目標を大きく下回り中には合格者のいないロースクールまであるという杜撰なロースクールの制度に不満があるのは確かだが、現役の弁護士などに話を聞いていて現実問題今のレベルの司法試験を突破出来ないような人間はどの道実務では使えないだろう。(だから突破出来ない自分はやはりまだ実力不足だと思う)」というものでした。

国家公務員である労働基準監督官と士業の弁護士はまた違うというのはあるかもしれませんが、足りないから増やそうという展開はどことなく似ているような気がします。やはり量を増やしつつも質を落とすわけにはいかないわけで、単に人数を増やすだけでなく質を担保するにはどのような制度が望ましかという視点も当然必要になるだろうと感じたので紹介させて頂きました。

No title

それと海老原氏についてですが、経済誌に寄稿した記事などを読んで薄々感じていたことなんですが、数年前と比較すると主張や立ち位置が変わってきているように思うのは僕だけでしょうか?労働環境の問題について積極的に発言し始めたのって割と最近じゃないですか?

記事の冒頭にもリンクが貼られてましたが→(http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-93e3.html)の記事のコメント欄で海老原氏自身も
<<<私は、「中小に行け!行かない若者が悪い!自己責任だ」と(その昔、4~5年前のまだまだ未熟な時代にひょっとしたらあったかもしれませんが)、思っておりません。
中小に行かない、行きたくない理由は「危ない・わからない・育てない・さみしい」の4つ。けっして若者のえり好みではない(いや、えり好みもあって当然。これさえ否定すべきではない)。まずは、4つの「ない」を取り除く仕組みを作ること。>>>
と、立ち位置の変化を示唆するようなコメントを投稿していますが。

ぶっちゃけた話、僕はこれまで海老原氏と常見氏は、「雇用のミスマッチの原因を求職者および学生にばかり求めることで、企業側の問題をいかに覆い隠すか」に重点を置いた主張をする論者だと認識して来ました。その為、先日BSのプライムニュースという番組で常見氏が労働環境の問題について言及したと知った時は何かの間違いじゃないかと思ったぐらいです。

同じく記事にリンクのある「四大卒も中小企業を目指せばいい」という記事を読む限り、海老原氏は少なくとも2011年の初め頃には労働環境の問題について言及し、雇用のミスマッチの企業側の問題についても明らかにしようとしているように感じられますが、「「若者はかわいそう」論のウソ」(2010年6月初版)を出版した段階などでは、海老原氏自身の言葉を借りればまさに<<<「中小に行け!行かない若者が悪い!自己責任だ」>>>といった主張が全面に出ていたように僕は感じます。

個人の資質や努力といった求職者側の問題ももちろん存在するでしょうが、労働環境の問題に代表されるような企業側の問題ももちろんあって、雇用のミスマッチが叫ばれる割にそういった企業側の問題はこれまであまり注目されて来なかった(取り上げなかった?)ように思います。なので傾向としては非常に好ましいのでしょうが、なにしろ海老原氏や常見氏に対して前述のような認識を持っていたもので、なんとも気味が悪いというのが僕の本音だったりします。

それともやはり僕の勘違いでしょうか?以前から経営者・大企業正社員・中高年用と、若者・非正規雇用者・中小企業正社員用、みたいにTPOで主張を使い分けていて、たまたまそれぞれを見聞きする機会が偏っていただけ、みたいな。

Re: No title

> William Yaminさん(「僕の知人に以前働いていた会社と給与未払いで係争中の人がいます」からはじまるコメントへの返信)

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

>労働関係のトラブルを専門にしているある弁護士の方の講演を聴くことがあり、質疑応答の際にこの知人の事例を出して「こういった踏み倒した者勝ちのような事態が起きる原因は何なのか?労働基準監督官の権限が弱いからなのか?」という質問をさせて頂きました。その弁護士の方の解答は「労働基準監督官には充分な権限が認められているが、仕事で関わっている監督官などはやるべきことをやらない。法的に認められている権限がどうのという話ではない。」というものでした。

講演会に出席するとは、勉強熱心ですね!さすがです。「監督官がやるべきことをやらない」というよりは「監督官がやるべきことをできない」という認識の方が良いのかもしれませんね。さすがに、仕事がめちゃくちゃ溜まっている状況下で一つ一つの案件を丁寧にこなしていくことは難しいですし。

>国家公務員である労働基準監督官と士業の弁護士はまた違うというのはあるかもしれませんが、足りないから増やそうという展開はどことなく似ているような気がします。やはり量を増やしつつも質を落とすわけにはいかないわけで、単に人数を増やすだけでなく質を担保するにはどのような制度が望ましか

確かにそうですね。現時点で僕には労働基準監督官の試験及び研修の概要についての知識が無いのでなんともコメントし難いですが、その視点が必要になることは間違いないと思います。

Re: No title

> William Yamin さん(それと海老原氏についてですが~へのコメント返信)

コメント有難うございます。僕も似たような違和感を抱いていたので、正直コメントを読んで安心しました(笑)

個人的に海老原さんの主張を読んですっきりしないのは、一つの論考に「リクルートワークスのデータを根拠に、"中小企業には求人がある!"と言ってしまう姿勢」と「ブラック企業対策の必要性」が並存しているように感じられるからです。正直ブラック企業の危険性を分かっていれば、リクルートワークスが発表した数字を単純に見て「ほら、ここには求人があるじゃないか!」なんて言えないはずだと思いますから。常見さんの主張は海老原さんとあまり変わらないはずなので、常見さんにも同じことが言えますね。ゆえに、海老原さん&常見さんが労働環境について言及されるのは端的に良いことだと思いますが、それと同時に気味の悪さも感じています。

No title

以前書いたかも知れませんが、財務省が予算を削減したしわ寄せで、労働基準監督官の正規の公務員が減り、非正規が増えたのが、労基が回らない原因だと、ハロワの方が仰っていました・・・
今度の政権には、労基の機能を回復、向上してもらいたいです。まぁ政治家に過度に期待するのもよくないかも知れませんが・・・

Re: No title

>すみさん

こんばんは、いつもコメント有難うございます。

> 以前書いたかも知れませんが、財務省が予算を削減したしわ寄せで、労働基準監督官の正規の公務員が減り、非正規が増えたのが、労基が回らない原因だと、ハロワの方が仰っていました・・・

なるほど。労働基準監督官の機能が弱まると労働者が皆安心して働けなくなってしまいますし、そこにはお金をかけても良いのではないかと思います。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: No title

> 非公開コメントをくださった方へ

はじめまして、コメント有難うございます。

そして激励有難うございます。僕の文章はまだまだ未熟ですが、なるべく早く「一般人レベル」に追いつけるように頑張りたいと思います!

監督官不足は信義則違反

労働基準監督官の不足を理由とした不十分な活動は難しいよね?

労働基準監督官はブラック企業経験者や失業者を中途採用したらいいよね?

国家公務員2種だよね!能力ってあんまり高くないよね!

ブラック企業経験者や失業者はある程度いるのに、

29歳以下しか募集していない自分達が悪いよね。

公務員の自己責任だよね。

最高裁昭和30年4月19日判決を、変更するように皆さんの啓蒙で、

公務員個人に損害賠償を負わせましょう!

ブルジョワよりの対策・活動忌避は、信義則違反・任務懈怠だよね!


行政の自己責任

時給5000円もらっているのに、

人が足りないは通じませんね。

自己責任です。

自分達の給料で負担してね。

中小は大企業勤務者が行くべき

中小企業は経営資源がないので、

能力のない新卒採用を求められても困りますね。

経験のある大企業の高齢者が中小企業へ行くべきと思います。

Re: 監督官不足は信義則違反

>監督官不足は信義則違反、行政の自己責任、中小は大企業勤務者が行くべきという件名でコメントしてくださった方へ

こんばんは、コメントありがとうございます。

>労働基準監督官はブラック企業経験者や失業者を中途採用したらいいよね?国家公務員2種だよね!能力ってあんまり高くないよね!

数を増やせば良いというものではなく、質もきちんと担保しないと意味がないと思います。つまり、仮に労働基準監督官の試験が「(試験を突破するために必要な)能力ってあんまり高くないよね!」と言えるようなものだったら(実際はそんなことないでしょうが)、その現状がまずいといえます。

>最高裁昭和30年4月19日判決を、変更するように皆さんの啓蒙で、公務員個人に損害賠償を負わせましょう!

そもそも公務員になりたがる人が減り、ひいては監督官不足の解消も遠ざけそうですね。
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