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「"フリーターは正社員になれない"というウソ」論の失敗

海老原嗣生さん著の「就職、絶望期 "若者はかわいそう"論の失敗」には、「"フリーターは正社員になれない"というウソ」という見出しがある。これは、日本経済新聞の2010年9月3日付けの記事「フリーターを正社員採用した企業は、全体の11.6%」を「厚生労働省の"平成21年・若年者雇用実態調査"のリリースをもとに作った、いわゆる偏向記事」と評し、その記事がもたらしたミスリードを批判している。


海老原さんの主張は、次のようにまとめられる。確かに「平成21年・若年者雇用実態調査」を見ると、過去1年間で9社に1社(11.6%)しかフリーターの採用実績は無いように見える。しかし、半数以上(52%)の企業はそもそも採用活動をしていない。そして、過去1年間で中途で若年者を正社員採用できた企業は21.7%しかなく、この21.7%を分母として、フリーターを正社員採用した企業の11.6%を分子におけば、実に5割強(53.0%)という数字になる。つまり、若年社員を中途採用した企業の過半数が元フリーターを正社員採用している、即ちフリーターには再チャレンジの門が大いに開かれている・・・というのが海老原さんの論理だ。そして、今日の記事の目的はこの内容に2つの疑問を投げかけることである。


第一に、海老原さんのデータの読み方に誤りがあるのではないかということだ。上の段落で「過去1年間で9社に1社(11.6%)しかフリーターの採用実績は無いように見える」と書いたが、海老原さんは本で「過去1年間でフリーターを採用したか」と題した棒グラフを作成し、それに「平成21年・若年者雇用実態調査」の数字を当てはめている。


しかし実際に「平成21年・若年者雇用実態調査」を確認したところ、フリーターの採用状況に関するパートにおいて「過去3年間のフリーターの応募採用状況をみると」という記述が見られた(http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/young/h21/dl/gaikyo.pdfのp9。あるいはhttp://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/young/h21/jigyo.html#04の「(2)フリーターの応募採用状況」という箇所)。つまり、海老原さんは「過去1年間で9社に1社(11.6%)がフリーターの採用実績がある」というグラフを作成しているが、実際には「過去3年間で9社に1社(11.6%)がフリーターの採用実績がある」という結果しか「平成21年・若年者雇用実態調査」からは読み取れないはずだと思われる。勿論、過去3年間全ての年でフリーターを採用した企業もあるだろうが、一方で「最初の1年間は採用したが、残り2年は採用していない」という企業もあるはずなので、海老原さんが言うほど門が開けているようには思えない。


正直、当初は本の誤植なのかと思った。僕が持っているのが初版だということ、且ついくらなんでも「過去1年間」と「過去3年間」を読み違える訳がないだろうと思っていたことに拠る。しかし、上で述べた「過去1年間で中途で若年者を正社員採用できた企業は21.7%しかなく、この21.7%を分母として、フリーターを正社員採用した企業の11.6%を分子におけば」という海老原さんの論理展開を見ると、海老原さんは本当に11.6%が「過去1年間」の採用実績だと思っているんじゃないかと考えられる。なぜなら「過去3年間で計11.6%」という認識を持っている場合ならば、同時に過去1年間のフリーターの採用実績は「11.6%」よりは低いということも認識できるはずで、即ち「21.7%を分母として、フリーターを正社員採用した企業の11.6%を分子におけば」という計算はできなくなるはずだからだ(ちなみに、「過去1年間で中途で若年者を正社員採用できた企業は21.7%しかなく」という記述の根拠は、http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/young/h21/dl/gaikyo.pdfのp5)。


もっとも僕の認識に基づく計算でも、「フリーターを採用する企業はそれなりの数ある」という海老原さんの主張がそれほど大きく揺らぐ訳ではない。しかし、やはり「平成21年・若年者雇用実態調査」を確認して、「過去3年間のフリーターの応募採用状況をみると」という記述を見落とすとはどうしても考えがたく、この点については海老原さんの本の記述に対するモヤモヤ感が残る。調査結果の本文だけでなく、表にも「表9 産業、フリーターの応募採用状況別事業所割合 (過去3年間)」と書いてあるのだ。あまりにもあり得ないと思いすぎて「もしかしたら僕の方が間違っているのかな」という気もしているので、「就職、絶望期 "若者はかわいそう"論の失敗」を持っている方がいたら、この点についてぜひ確認していただきたいです(笑)


もう一つは、フリーターを採用する企業の労働環境に怪しさを感じると言う点である。海老原さんは「確かに、大手企業を取り上げたらフリーターを正社員採用する企業など少ない。しかし、中小はまったく話は別。現状でもバラエティに富む中小企業群が雇用のセイフティネットとして日本型雇用と全く異なる慣習で若者を迎えている。近視眼的に大手企業の風習のみしか念頭におかない論評は、まったく現実の姿を捉えていない」と述べ、この見出しを締めくくっている。これだけ見ると、大いに希望がわいてくるように思える。


しかし本には書かれていないが、「平成21年・若年者雇用実態調査」の本文を読むと、どういう業界が積極的にフリーターを採用しているのかが分かる。本文には「産業別にみると、"(フリーターの)採用にいたった"は宿泊業,飲食サービス業が21.6%と最も高く、 次いで生活関連サービス業,娯楽業が15.8%、建設業が13.1%の順となっている」と書かれている。そして平成23年の雇用動向調査における「産業別の入職と離職」を見ると、建設業はともかく、「宿泊業,飲食サービス業」、「生活関連サービス業,娯楽業」は入職率・離職率共に全産業の中でトップクラスであることが分かる。これはつまり、人の入れ替えが激しいということ、言い換えれば入社してもすぐに人が辞めるのでまた次の人が必要になるような労働環境があると言うことではないか。


勿論、そういう労働環境が待っているとはいえ求人があることには変わりないので、そういう求人も含めて「チャンスはある」と評価するのは個人の自由だ。海老原さんはそういう考えだということだろう。ただこのブログの立場は、過去記事「初めから若者を使い捨てることを前提としている会社の求人を含めて"求人はある!"なんて言うべきではない」のタイトルの通りなので、フリーターを多く採用している産業の求人をもって「チャンスはある」とは言いたくない。


前に「場合によってはこのブログで"若者はかわいそう論のウソのウソ"シリーズを設けて、とことん海老原さん(の主張)批判の記事を書こうと思う」と書いたが、まさかこんなに早く第一弾が書けるとは思っていなかった。記事を書いている最中にも、海老原さんの本の記述へのイライラ感がどんどん増していった。正直、この社会に「名誉毀損」という観念が無ければもっと過激な表現を用いたかった(笑)これからも海老原さんの記述を鵜呑みにせずに元データを確認し、必要ならばその誤りを指摘できればと思う。


海老原さんが言う「"フリーターは正社員になれない"というウソ」論は失敗しているという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
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No title

下記のtogetterで紹介させていただきました→海老原嗣生『決着版 雇用の常識「本当に見えるウソ」』への疑問 http://togetter.com/li/444945

Re: No title

> mu0283 さん

はじめまして、コメントありがとうございます。

>下記のtogetterで紹介させていただきました→海老原嗣生『決着版 雇用の常識「本当に見えるウソ」』への疑問 http://togetter.com/li/444945

わざわざご連絡ありがとうございます。拝見いたしまして、とても勉強になりました。このまとめを見て益々、本に紹介されているデータを鵜呑みにすることなく、きちんと一次資料に目を通す必要性を感じました。

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