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三菱樹脂事件という「企業の採用活動の自由」に関する判例~「あなたは就活デモに参加していたから不採用」と企業が考えるのもOKか~

このブログでは、「企業の~な採用活動はおかしい」というダメ出しをする記事が多い。しかし一方で裁判所は、企業の採用活動の自由を広く認めている。企業の採用活動の自由について裁判所が見解を示したのが、三菱樹脂事件というケース。憲法を勉強したことがある人は絶対に一度は耳にしたことがあるはずの、とても有名な判例である(「カクさん」さんが「不採用の理由が分からずに苦しむ就活生をサポートする役割を担うべきなのは企業ではない」という記事のコメント欄でこの事件を紹介していますが、僕もそれ以前からこの事件の概要は大体は知っていた・・・ということを一応書いておきます笑)。


これは三菱樹脂株式会社に採用された人(以下、X)が、在学中に学生運動をしていたにも関わらず入社試験でそのことを隠していたという理由で3ヶ月間の試用期間終了時に本採用を拒否されたことに異議を唱えた事件。Xは裁判所に対して本採用の拒否が有効であるかどうかを争い、地方裁判所・高等裁判所はXの言い分が正しいと判断したのだが、その判断は最高裁によって覆された。


細かい理屈を書くと記事を読むのをやめてしまう人が現れかねないので(笑)いきなり結論の一部を大雑把に書くと、この事件で最高裁は「企業が誰を採用して、誰を不採用にするかはその企業の自由。だから、企業が特定の思想・信条を有することを理由に採用を拒否しても、それは当然に違法行為とはみなされない。さらに、企業が労働者を採用するか否かを決めるにあたっては、応募者の思想・信条を調査することも問題ない」と判断している。憲法の22条や29条上、企業は営業・その他経済活動を行う自由が認められており、その自由の一環として企業には「自分が採用したいと思った人と契約を結ぶ」ことが認められているといえる。


確かに企業が国から「この人を採用しなさい」なんて強制されたらたまったものではないので、この権利が尊重されるべきことは疑いようがない。しかし、この裁判所の判断に対する批判は強かったらしい。例えば、憲法学者の芦部信喜先生は、「絶対的に保障される思想・信条の自由について判決のように考えるのは疑問だ」と裁判所の判断を批判し、且つ「学説上も批判的な立場が有力である」と他にも判決の内容に異議を唱える学者がいることを示唆している。


芦部先生の見解としては、三菱樹脂事件における裁判所の見解を貫くと「~な活動に参加したいけれど、その活動に参加していたことがバレたら就職に不利になってしまう・・・」という萎縮効果をもたらす危険性があるということだと思う。その具体例として考えられるものの一つに就活デモが挙げられる。例えば就活デモをやりたいが、デモの企画者となるなら実名を晒さないと参加者が怪しがって集まらなくなるかもしれない。しかし、就活デモのホームページを作ってそれに実名を載せ、それを企業に見られたら就職がどうなるか分からない。だから、やっぱりやるのは止めたほうが良いという自制心が働いてしまう、と。


三菱樹脂事件で裁判所は「法律その他による特別の制限」がある場合には、企業の採用の自由が制約されるとも判断しているが、労働政策研究・研修機構によれば「思想・信条:思想や信条(考え方)を理由として採用しないことに関しては、明確にこれを禁止する法律の規定がありませんので、原則として認められることになります」ということなので、企業が応募者の氏名を検索した上で「この人、就活デモに参加してたみたいだから、雇うのを止めておくか」と判断することは法律上問題はないということになるのだと思われる。もっとも、その不採用理由を応募者に正直に伝えたら民法上の不法行為にあたる可能性が出てくるようだが。


このケースから伺えるのは、企業の採用活動の自由を貫くと、一方で応募者の利益が損なわれる場合があり、両者の利益の調整が必要になるということだ。あまりにも企業の自由を認めると、極端な話「女性は子供を産んで辞めるだろうから、いらないよ。男女雇用機会均等法なんか必要なくね」ということにもなりかねないし、それは性別が自分の努力でどうこうできるものではないことを鑑みると非常にまずいと思う。かといって、企業に過度に「応募者間の平等」を求めても、それは企業からしたら「私たちが採用したいと思った人を、素直に採用させてくれよ」と考えるに違いない。もっとも何をもって「企業の採用活動の自由と、応募者の利益の調整ができている」といえるかは分からず、それは現在考えているところだ。


企業の採用活動の自由と、応募者の利益の調整を考えることが必要だという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
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No title

思想信条の自由とはいっても、ネオナチ、極右、極左は採用したくないですし、従業員もそういう人が職場に入るのはいやでしょうね。

かつての学生運動というのはある種の極左暴力集団だったので、就活デモと同じにするわけにはいかないです。
また、学生運動で暴れてたような人が就活になるとさっさと髪を切り、スーツに着替えて一流企業に就職、という例も多かったと聞いています。

そんなわけで、Xさんに対して同情するかというと、できない人も多いと思いますが、就活デモのレベルだと、判決も違ってくるように思います。この判決で、即、就活デモもだめ、というのはちょっと極端な感じ。

実際、オウムとか、新興宗教の関係者も、社内に悪影響を及ぼしかねません。
また、共産主義者が入ってきて、組合活動を盛んにすると困る、というのもありますね。

キリスト教系の学校では、教師を採用する際、キリスト教徒か、キリスト教に理解のある人、という条件がつきますが、それはそうですよね。

No title

追記です。

たとえば、3人の人が同じ企業に応募し、
AさんとBさんは学生運動について正直に話して不採用。
Cさんは隠して採用。

だったら、公平性という点でどうなんでしょう。

この事例では、Xさんは結局、企業との和解が成立、職場に復帰してるとか。
隠した方が得じゃん、て、そういう問題じゃないんだろうけど。

それに、これは隠してたことが問題なんで、活動をしていたこと自体が問題なのかは疑問。
この企業が学生運動してた人を全部不採用にしたのかどうかもわからないし。

管理人さまのいう、就活デモの件は、堂々と名前出してるなら隠してないので、このケースとは違う話じゃないかと思います。

そもそも企業面接というのは就活生の能力を判断するものではないのか?

思想・宗教で判断したら就活生は身動きが取れなくなってしまう。

それに学生運動も就活デモも就活生のプライベートな部分じゃないか。

思想信条の自由の侵害以前にプライベートに踏み込むのはどう考えたっておかしい。

Re: No title

> ななし さん

こんばんは、こちらの記事にもコメントありがとうございます。

>かつての学生運動というのはある種の極左暴力集団だったので、就活デモと同じにするわけにはいかないです。

確かに、昔の学生運動と今の就活デモの活動のレベルが同等と言うのは誤りだと思います。ただ、

>Xさんに対して同情するかというと、できない人も多いと思いますが、就活デモのレベルだと、判決も違ってくるように思います。この判決で、即、就活デモもだめ、というのはちょっと極端な感じ

という点に関しては、あくまでもこの判例の記述に従えば、裁判所が「企業が誰を採用して、誰を不採用にするかはその企業の自由」という趣旨の見解を示している以上、就活デモの活動のレベルが昔の学生運動のそれより周りに悪影響を及ぼさないとしても、企業が「就活デモに参加していたから」という理由で不採用にしても、それは法的には問題にならないように僕には思えます。

Re: タイトルなし

> 雨宮さん

こんばんは、いつもコメントありがとうございます。

>そもそも企業面接というのは就活生の能力を判断するものではないのか?

厚生労働省の「採用のためのチェックポイント」には、「採用選考に当たっては 応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」と記されていますね。ただ、企業にも採用の自由がありますし、「~な活動をしてた人は、入社後に面倒なことを起こしそうだから、なるべく受け入れたくない」と考える気持ちもわからなくないので、なかなか難しいところです。

思想・宗教で判断したら就活生は身動きが取れなくなってしまう。
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