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<書評>大卒だって無職になる(工藤啓著)~「職業社会にうまく入っていけない若者には~な傾向がある」と単純には言えない~

前回の記事で取り上げた「大卒だって無職になる」という本は去年の11月に出た本だが、僕が本書を読み終えたのは、遅らせばながら3月下旬のことであった。このブログを読んでくださる方ならば大いに関心を持つであろう本だと思うので、本の概要を紹介したい。


著者の工藤啓さんは、NPO法人「育て上げネット」の代表を務め、主に「職業社会にうまく入っていけない若者」が自立していけるようにするための支援に取り組んでいる。「職業社会にうまく入っていけない若者」というと、もしかすると「就活を"茶番"、"バカバカしい"と感じて、職探しをしない若者」をイメージされる方がいるかもしれない。確かにそのような若者も一定数いるかもしれないけれど、工藤さんの本に登場する若者はそういう若者とはまた違った思いをそれぞれ持っていた。


この本の良いところは、①「職業社会にうまく入っていけない若者」がどのような考えを持っているのか②「職業社会にうまく入っていけない若者には~な傾向がある」と単純に説明できないことをそれぞれ教えてくれることにある。


①について。前提として、本の最初に工藤さんとその友達Aが居酒屋で会話を交わす場面があるが、友達Aは工藤さんの取り組みを聞いて次のような疑問を発する。

よくよく考えてみれば、お前だって、俺だって、自立支援なんか受けたことないじゃん。でも、自立しているよな。なんで、若い奴らにわざわざ自立支援してあげなくちゃいけないのかが、どうしてもわかんないんだよなぁ。俺が一生懸命働いている税金が、そいつらに使われてるのは納得いかねぇ


工藤が言っている"働けない"というのは、結局そいつらの言い訳じゃないの?本当は"働きたくない"んだよ。そいつらはきっと働かなくても食っていける。みんな親が金持ちのお坊ちゃまなんだろ?汗かいて必死で仕事してる俺らを見下してるんだよ

これは「働かないのは"若者の甘え"だ」というスタンスの人が抱く気持ちの典型的なものと言って良いだろう。工藤さんはその気持ちを受け止めた上で、「若者の甘え」という文脈に回収されがちな大卒無業者の存在について、工藤さんが支援した若者の例を紹介していくことで、問題がそう単純な話ではないことが説明されていく。


一言で「働くことにつまずく」と言っても、その実態は多種多様であることが本を読み進めていくうちに実感できていく。有名国立大学を卒業したあと4年間引きこもった人。面接にて自己PR・志望動機が答えられず「私には何もない」と感じるようになった人(この人が、前回の記事で取り上げた「R子」さんである)。希望通りの会社に入社したものの、それまでの人生で「失敗経験」が殆ど無かったことから失敗することを怖いと感じ、そのプレッシャーから入社から3年間力を抜かず働き続け、結果会社をやめてしまった人・・・。優劣をつけるのもどうかと思うが、特に3番目の人に関して言えば、工藤さんの友人が述べた「"働けない"というのは、本当は"働きたくない"ということ」というイメージは全く当てはまらず、むしろ労働に打ち込みすぎたからこそ「働けない」状況に陥ったと言える。


続いて②について。本の中には、工藤さんの別の友人Dさんが「大卒でニートになった人には、"気が弱かったり内気だったりする"という共通項があるのではないか?」という仮説を工藤さんに述べる箇所がある。ただ、工藤さんはその仮説を一定程度認めつつも、「ウチのNPOに来ている若者は、"一人ひとりが例外的だ"と言った人がいたほど、千差万別なのだ」と続ける。


実際にその記述の後、おしゃれなヘアスタイル・ブランド物で占められたファッションでNPOの事務所にやってきて、軽い雑談も問題なく出来る人のケースが紹介されている。その人は「仕事ができる人」という雰囲気を醸し出していて、大学卒業後は外資系の医療機器メーカーで働いていたのだが、会社を1年で退職。その人には物事に一生懸命取り組む意欲はあるのだが、NPOが実施するプログラム研修において、頼まれたことを次々と忘れたり、二つ以上のことを同時にできなかったりするなどの問題点が見られた。後に適性検査をした結果、「空間認知や形態を捉える能力がやや低め」という結果が出て、その人に「本人も、周囲も気づくことができない苦手な領域」があることが可視化されたという。このケースについて言えば、Dさんの仮説が当てはまらないと言える。


なお、「ウチのNPOに来ている若者は、"一人ひとりが例外的だ"」という記述は、就活に苦しむ人の傾向を類型化しようと考えていた僕にとって「少なくとも、話を単純化することを持って"類型化できた"と考えるのは明らかに誤りだ」という気づきを持たせてくれたという意味で、本書の中で一番勉強になったものであった。本書全体を通じて、工藤さんは「職業社会にうまく入っていけない若者には~な傾向がある」と結論づけることを避けているような印象を僕は持った。それは、そもそも工藤さんの役割が「若者が職業社会への参入につまずく原因となっている構造的な問題」を徹底的に検証することよりも目の前の若者を支援することにあるという事情もあるだろうが、一方で純粋に話を単純化して語ることが不適切だという思いをも持っているからだろうと考えている。これは、この領域に関心を持つ人の全てが持つべき心構えではないだろうか。


ページ数もそれほど多くないし、語り口も平易なので、1時間もあれば読める本だと思う。この本を読むことで「職業社会にうまく入っていけない若者」の全てがわかるとは言わないけれども、理解のとっかかりとしては最適な本といえる。

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僕も以前この本を読んだことがあるのですが、途中で読み進めるのが辛くなってきた程リアルに就活生達の悩みや苦しみが描かれていて、読んだことを若干後悔したのを覚えています。
個人的な意見としては、本文にあった工藤さんの友人の言葉の中に見受けられる「今どきの若者」論は20代後半から70~80代幅広く共通して見られると思います(これも1つの「~の傾向がある」になるのでしょうが)。特に僕たちの親世代に強く見られるように感じられます。仮に親がそれなりに理解のある方だったとしても、それ以外の周囲の人々の目が果たして理解のあるかどうかも不明ですし、それ以上に過激な競争を強いられ、失敗の許されない状況に追い込まれている就活生に「甘えるな」や、「辛くても耐えろ」といった言葉を投げ掛けるのは酷な話だと思うんですね。

Re: タイトルなし

> たろう さん

こんばんは、いつもコメントありがとうございます。

>個人的な意見としては、本文にあった工藤さんの友人の言葉の中に見受けられる「今どきの若者」論は20代後半から70~80代幅広く共通して見られると思います(これも1つの「~の傾向がある」になるのでしょうが)。特に僕たちの親世代に強く見られるように感じられます。

その論調を振りかざすのが、一番話が単純で楽ですからね。仰るような「今どきの若者」論を主張している人にこそ、本書を読んでもらえたら良いと思います。

>それ以上に過激な競争を強いられ、失敗の許されない状況に追い込まれている就活生に「甘えるな」や、「辛くても耐えろ」といった言葉を投げ掛けるのは酷な話だと思うんですね。 

これに関しても、本書を読むことで就活生達の悩みや苦しみの中身を少なからず学べるので、就活生に対して「甘えるな」と感じている人ほどこの本を読んでもらいたいと思います。
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