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海老原嗣生さん「若者が絶望するほど昇進は難しくない」 VS 常見陽平さん「企業は役職の無い人たちで動いている」

ある主張の説得力の有無を判断する際に「根拠」に着目する人は多いと思う。そもそも主張に根拠が備わっているのか、根拠が備わっているとしてその根拠は主張を支えるに足るものなのか。僕は記事を書く際に就活・労働問題を取り上げた文献に目を通すことが多いけれど、これらの点に注意しながら、参考にすべき主張とくだらない主張を見分けている。


ただたまに困るのが、相反する2つの主張を目にし、且つ一応それぞれの主張に根拠が備わっている場合である。こういうのを目にすると、単に根拠が備わっているだけで安心せず、その根拠の中身まで判断しなければいけないのだと実感する。


その一つの例が「昇進」に関する話である。海老原嗣生さんと常見陽平さんの主張をそれぞれ紹介したい。


海老原さんの立場は「若者が絶望するほど昇進は難しくない」というもの。彼は著書「若者はかわいそう論のウソ」にて、「リクルートエージェント転職市場定点調査」の09年度版にある特別調査を根拠に、正社員の男性が「30代前半になると次々と係長になり、その結果34歳の時点で役職者比率が5割を超える。同様に30代後半では課長が増え出し、42歳で課長比率が5割を超える」、「40代末には約7割が課長以上に昇進している」と主張している。さらにデータの数字をもとに「このデータは大卒に限ったものではない。大卒限定でしかも年齢を55歳まで上げると、やはり8割以上が課長職についているのではないかと推測できる」と述べている。


一方で常見さんの立場は「企業は役職の無い人たち、つまりジムのような人たちで動いている」というもの。彼は著書「僕たちはガンダムのジムである」にて、「日本労働組合連総合会"連合2011年春季生活闘争 賃金レポート 役職別の人員構成と賃金"」を根拠に「大卒の男性50~54歳で見てみると、非役職者が35%である(中略)この年次においても課長、係長どまりどころか、非役職者が35%いるというのは注目すべき事実だ」、「男性大卒35~39歳においては非役職者は65%である」と主張している。


二人の主張の相違点をまとめると、海老原さんは「34歳の時点で役職者比率が5割を超える」と主張しているのに対し、常見さんは「男性大卒35~39歳においては非役職者は65%である(=役職者は35%)」と主張している。また、海老原さんは「40代末には約7割が課長以上に昇進している」と主張しているのに対して、常見さんは「大卒の男性50~54歳で見てみると、非役職者が35%である」と主張している。2人が参照しているデータはそれぞれ年度が違うけれど(海老原さんは09年度版のデータを、常見さんは2011年度のデータを参照している)、その違いを差し引いても、2人が挙げる数字には随分と違いがある。


このように、2人の著書をさらっと読むだけだと「あれ、昇進はそんなに難しくないのか?それとも難しいのか?」と混乱してしまう。この混乱をもって2人のどちらか、あるいは双方が嘘をついていると判断するのは早計だが、一方で主張を鵜呑みにもできないのも確かだと思う(ちなみに海老原さんのデータの解釈に対しては城繁幸さんが自身のブログで批判しているhttp://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/8beb5acf05dc3d44ce822c0667fb8bfb)。文献に目を通しているとしばしばこういうことがあるので「専門家の言うことを鵜呑みにするのはどうなのか?」という批判精神を共有するために、今後もこのブログで同じようなケースを紹介したい。


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No title

常見氏の参照しているデータを見てみましたが、これもまた大いに解釈に幅がありそうな内容ですね。部長級、課長級、係長級、他役職、非役職。「級」って。(http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/2012/shuukei_bunseki/12.html)


記事にもリンクが貼られている→(http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/8beb5acf05dc3d44ce822c0667fb8bfb)で海老原氏が城氏に批判されているのは、課長補佐というポストを城氏は
"担当部長や参事と同様、ほとんどはポスト不足をカバーするためのお飾りであり、部下もデスクもついていないなんちゃって管理職である"
と考えているのに対して、海老原氏は
"課長補佐の人たちも、外の人に向かっては「課長」と名乗り、部下に対しても「課長」と威張っている。労組に加入できない会社も多いし、また、給与的にも係長よりは課長にかなり近い"
という考えから課長補佐を課長に加えた為に数値が高めになっていることが原因です。


そういった観点から考えると、この常見氏が参照しているデータも前述した課長補佐の件のように肩書きと実態が乖離している場合にどのカテゴリーに含むかというのは人によって解釈が異なることが考えられるので、多少の誤差は想定出来ます。

ただしそれはそれこそ課長補佐を課長級と係長級のどちらに入れるかといった問題であって、非役職とそれ以外のカテゴリーの間で同じような分類の問題が生じるとは考えにくいと僕は思ったんですが。

マクドナルドの名ばかり管理職の裁判は、会社的には店長という肩書きになっている人が権限や仕事内容の実態を見る限り労働法上の管理職にはあたらないと判断されたことで有名ですが、それと似たような感じで、一応役職はついているけれども実態は平社員と変わらないから非役職に入れておこう、みたいなことが果たして起こり得る得るのかと。


僕の想像でしかないですが、「役職」という表現を用いる以上やはり実態がどうであるかはひとまず脇に置いて、肩書きを基準に分類するのではないかなという気がします。なので非役職に関しては解釈の余地が生じず、比較的正確、そして海老原氏と常見氏の主張はどのみち対立している、ということになるのではないかと思います。

まあもちろん、もしある労働者が肩書き上も役職が付いているのかどうかよく分からない、なんてことが日本の企業では当たり前にあるなら非役職の数値も誤差が生じる余地が大いに発生しますが。まともな会社ならさすがにそれはないでしょうと思いますけども・・・

ああでもリーダーとか役職なのかどうか扱いに困るかもしれないですね・・・結局僕にもよく分からないです。

No title

完全に推測ですが、調査母体というか回答者層がかなり違う事がこのような問題が起こっている原因のような気がします。

常見さんが参考にしているレポート(http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/2012/shuukei_bunseki/)は国の調査をもとにしたもののようです。

一方で海老原さんの方は、リクルートエージェント転職市場定点調査の09年度版にある特別調査というのが見つからなかったので、もしかすると調査方法は違うかもしれませんが、見つかった2007年の調査(http://www.r-agent.co.jp/kyujin/knowhow/tatsujin/enquete/)の調査方法の部分を見てみると、インターネット調査で過去2年以内に転職した人、または転職について情報収集レベル以上の活動を行った人で、全国に住む専門学校卒以上の20~49歳の男女。会社員(正社員)の人という事ですから、国の調査とはかなり違ったものになってくるのは当たり前のような気がします。

多分アンケートサイトを使ったものだと思いますが、ネットに繋いでいてアンケートサイトに登録していて、この条件に合致し、尚且つわざわざ回答する人というのは一般的な人か?と言えばそうではないような気がしますし。アンケート調査に協力する人は平均的な人か?というのは何度も書いている事ですが。




Re: No title

> William Yamin さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>この常見氏が参照しているデータも前述した課長補佐の件のように肩書きと実態が乖離している場合にどのカテゴリーに含むかというのは人によって解釈が異なることが考えられるので、多少の誤差は想定出来ます。

そうですね。穿った見方をすれば、解釈の仕方次第で、自分の都合のよい方向に主張を展開することが可能なのだということでしょう。


>なので非役職に関しては解釈の余地が生じず、比較的正確、そして海老原氏と常見氏の主張はどのみち対立している、ということになるのではないかと思います。

そうなりますね。まだ確信が持てないので書くのは不適切かもしれませんが、常見さんが援用しているデータは正社員だけじゃなく契約社員も回答者に含まれているように思え、それが非役職者率を押し上げているのかなと考えています。

Re: No title

> 11卒業務未経験無職 さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>常見さんが参考にしているレポート(http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/shuntou/2012/shuukei_bunseki/)は国の調査をもとにしたもののようです。

あ、そうなんですか!じゃあ、そっちの方が信用性が高いんですかね。ただ、海老原さんも自身が援用したデータについて「回答者数が多いし、データとして信用できるだろう」という旨のことを述べているのですが(笑)


同じ件について議論をしていても、どのデータを根拠に用いるかで議論の筋道がかなり異なってくることが興味深かったです。

No title

>あ、そうなんですか!じゃあ、そっちの方が信用性が高いんですかね。ただ、海老原さんも自身が援用したデータについて「回答者数が多いし、データとして信用できるだろう」という旨のことを述べているのですが(笑)

今手元に海老原さんの本がないためなんとも言えませんが、今回に関してはそうおもいます。
勿論、常見さんが取り上げたデータも国のデータをもとに連合がまとめたものですので、決して全てが正しいものになっているとは言えないと思いますが。(国のデータ自体も疑う必要はあると思います)
実際、William Yaminさんがコメント欄で微妙な部分を指摘していますし。
「若者はかわいそう論のウソ」は、他者の使用したデータを信頼性の面から批判しつつも自身の所属組織のデータを何の疑いもなく利用しているという印象が特にあります。
(アマゾンのレビュー欄でも批判されていましたが)

>同じ件について議論をしていても、どのデータを根拠に用いるかで議論の筋道がかなり異なってくることが興味深かったです。

既に知っていたら申し訳ないですが、最近こんな調査を見つけました
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/news/news1305.pdf
先日、lingmuさんは百田さんの記事をもとにした記事を書いていましたが、この調査のデータを使えば若者は自己実現とかやりがいを求めているとは必ずしも言えないのではないかと導き出せるように思います。(調査対象は偏りがありますが)
逆に他の調査(私は該当するものを知りませんが)を使えば、若者は自己実現ややりがいを求めていると言えるのではないかと思います。

Re: No title

> 11卒業務未経験無職さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>既に知っていたら申し訳ないですが、最近こんな調査を見つけました
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/news/news1305.pdf
先日、lingmuさんは百田さんの記事をもとにした記事を書いていましたが、この調査のデータを使えば若者は自己実現とかやりがいを求めているとは必ずしも言えないのではないかと導き出せるように思います。(調査対象は偏りがありますが)

全然知らなかったです!ご紹介、ありがとうございました。

なお、調査ではありませんが、例えば「NPOに就職を希望する人が増えている」という内容の新聞記事なんかはあったりするので、それを根拠に据えて「若者は自己実現とかやりがいを求めている」という主張を展開することは可能です。一方で11卒業務未経験無職さんが紹介してくださったデータを使えば「若者は自己実現とかやりがいをそこまで求めているわけではない」という主張を展開することが可能になるでしょう。だからこそ、それぞれの主張の根拠を見て、どちらがより信頼に値するのかを検討しなければなりません。
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