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「"就社志向"の研究」・「ブラック企業完全対策マニュアル」のレビューを書きました

先週から僕が書いた「就活問題・労働問題・教育問題に関する本」のアマゾンレビューの紹介を始めていますが、今回は常見陽平さん著「"就社志向"の研究 なぜ若者は会社にしがみつくのか」・古川琢也さん著「ブラック企業完全対策マニュアル」のレビューを転載します。「"就社志向"の研究」のレビューがかなり長いので(星1つをつけるにあたっては、やはりそれなりの理由は書かないといけないと思うので・・・)、興味ない人は読み飛ばして「ブラック企業完全対策マニュアル」の書評の方に目を通してもらえればと思います。

●「"就社志向"の研究 なぜ若者は会社にしがみつくのか」(評価:星1つ)

「海老原嗣生さんの仕事の劣化バージョン」

P.9にも書かれていますが、本書の目的は働き方・就活に関する事実・問題が何なのかを整理することにあります。本書を手に取る前に認識していただきたいのが、本書には著者なりの「では、どうすればよいのか?」という考えが示されているわけではないということです。


本書を読み終えても、結局のところ著者が就活をどう改善するべきと考えているのか、そのための策は何だと考えているのかが見えず、その点に不満を感じました。著者は本書でたくさんの「ダメ出し」を行います。「企業の採用改革はダメ」・「就活時期の繰り下げはダメ」・「新卒一括採用批判はダメ」・・・。


もっとも、じゃあ著者は「現状維持で良い」と考えているのかというと、「実際の学生が取り組む就活の肥大化・煩雑化、さらには企業と学生が出会えない構造こそが問題なのである(p.83)」・「学生が取り組む活動としての就職活動、企業が取り組む採用活動双方にとって肥大化し、負荷のかかるものになっていること、構造的な問題を抱えていることの方を問題として直視したい(p.105)」と述べているので、そういう訳でもないようです。しかし、本書では問題を直視したいと言って話が終わっています。本書の目的が事実・問題の整理であることは分かりますが、正直読み終えて「散々ダメ出ししておきながら、自分なりの解決策は示さないのか」という苛立ちを覚えました。本書と同様に、雇用問題の事実を丁寧に捉えることを目的とした仕事は何年か前に海老原嗣生さんという方も行い「就職、絶望期」などの著書を出しているのですが、彼が事実の整理に留まらず「問題の解決策の提示」もセットで行ったことを鑑みると、本書の存在意義に大きな疑問を抱きます。


もっとも、本書の目的は事実・問題の整理であるのだから、本書の評価はその目的を達成できているか否かで決めるべきだという意見もあるかもしれません。ただ、本書の中身に関してもいくつか不満がありました。その中で2つだけ記します。


第一に、著者が依拠するデータの信頼性に関する説明が不親切だったことです。この点、海老原さんは「就職、絶望期」という著書において、自身の主張を支えるデータを紹介する際に「大小約2500社にアンケートを実施した大規模な調査なのだが、とりわけ5000人以上の超大手企業の捕捉率がすごい」・「大量のアンケートとグループインタビューをもとに、就職開始から学生の志望軸がどのように変わっていくか」など、データの信頼性をも説明していました。勿論、全てのデータについて一々そのデータの信頼性を論証する必要は無いと思いますが(特に公的データを用いる際には、そういう説明は不要と思いますが)、本書では特に「HR総合調査研究所」のデータを用いる際にそのような姿勢が欠けており、著者が依拠するデータをどこまで信用していいのか疑わしい箇所もあります。例えば、著者は「HR総合調査研究所」のデータを根拠に「ターゲット校を設定する企業が52%にのぼる」ことを論証していますが、その調査に参加した企業数は書かれておらず、どこまで調査結果を鵜呑みにしてよいのかが分かりませんでした。データを信用してよいのか分からないということは著者が言う「事実」が本当に事実なのかを疑問に感じることにつながる訳で、本書を読んでも自分の中で事実が整理された感覚は芽生えませんでした。


第二に、「なぜその事実を伝えようとしているのか?」という目的意識が感じられないことです。本書における議論には脈絡が欠けている箇所が散見されます。例えば、新卒一括採用の是非について議論しているかと思えば、いきなり「雇用契約の特殊性」について解説を始めたり。また、本書の冒頭で「学生にとっての就活対策本ではない」と言いながら、第5章の初めで「最終面接で落ちてしまう理由」を解説し始めたり。あるいは、なぜか唐突に「意識の高い学生の出現」について解説を始めたり。もしかすると著者は就活に関する事実を網羅的に伝えようとしていたのかもしれませんが、読み手からすると「この事実を読者に伝えることで、何がしたいんだ?」という疑問を抱きます。この点、海老原さんの主張の流れは「若者は世間で言われているほどかわいそうではない→でも、問題もある→その問題の解決策は~だ」とすっきりしている、即ち事実を整理することの目的意識がはっきりしていると言え、本書と比べると質が高いものと言えます。


自分がここまでで書いた文章を読むと、全体を通して本書を批判して海老原さんの本を持ち上げる構成になっていると感じます。以上より、本書は「海老原嗣生さんの仕事の劣化バージョン」と表現できるかと思います。正直個人的には海老原さんの論考にもおかしな点が多いと感じているのですが、本書と比べれば質は高いです。就活・雇用問題について1冊手に取るなら海老原さんの本を取る方が良く、本書に目を通す価値は乏しいというのが私の評価です。


なお、本の副題に「なぜ若者は会社にしがみつくのか」とありますが、この点に関する考察は皆無です。「会社にしがみつきたがる若者が増加中」という主張の論証は一応あるのですが、なぜ若者が会社にしがみつきたがる傾向が高まったのか、その理由に関する考察はありません。本書でも取り上げられている労働政策研究・研修機構の「第6回勤労生活に関する調査」では、「複数企業キャリア」を支持する20-29歳が2007年時に42.9%だったのにも関わらず、2011年時には28.2%に急落したという結果が出ました。個人的にはなぜそのような結果となったのかが知りたかった(少なくとも、専門家の考察を知りたかった)のですが、本書にそのような視点はありません。本書の副題は「嘘」だと思った方が良く、この副題に関心を持った人は注意してください。


●「ブラック企業完全対策マニュアル」(評価:星5つ)

「ブラック企業の問題点・ブラック企業に立ち向かう術をコンパクトにまとめた良書」

P.3に書かれている通り、本書は「ブラック企業の実態を知ってもらうと同時に、それらとの闘い方を知ってもらうこと」を目的として書かれた本です。


本書の長所は、第一に、ブラック企業に関する実情・様々な論点を網羅していることです。本書では、ブラック企業の見分け方・ブラック企業がどのような手口で労働者を追い詰めていくか・ブラック企業に対抗するにはどうすれば良いのか・専門家を頼る際に注意すべきこと・・・などブラック企業について考える際に知っておくべき知識がコンパクトにまとまっています。それでいながら、解説の質も十分担保されています。


第二に、ブラック企業に立ち向かうための術・姿勢が具体的に書かれていることです。この点、今野晴貴さん著の「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」には労働者に「(ブラック企業に立ち向かうために)戦略的思考をせよ」と提言する箇所がありますが、その「戦略的思考」とは何かが本書を読むと伝わってきます。例えば、著者曰く「労基署を動かすにもコツがいる」らしく、闇雲に労基署に訴えることの意義があまり大きくないことが分かります。労基署を動かすには「証拠」が必須なのですが、その「証拠」の集め方にも注意すべきポイントがあることが本書を読むと分かります(ここで、第一の長所を説明した際に「解説の質も十分担保されています」と書いた意味を分かっていただけるのではないかと思います)。労働者が勝手に「これが戦略的な策だ」と思い込みながら企業に対抗しようとしてもあまり意味は無く、専門知に裏打ちされた効果的な行動をとる必要性を実感します。


上記のような長所があり、且つ個人的には特に不満を感じる部分も無かったことから星5つとしました。ちなみに、ブラック企業問題を扱った本として今野晴貴さん著の「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」が有名ですが、この本が「ブラック企業に関するエピソード・ブラック企業を存在させる構造」について力を入れて考察しているのに対して、本書はタイトルにある「完全対策マニュアル」という文言から分かるように、ブラック企業に立ち向かうための具体的な術・姿勢の説明に多くのページ数を割いているという特徴があります。どちらも読めればベストですが、1冊だけ購入するならば各々の関心に沿った本を手に取ると良いと思います。 

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No title

両書とも読みました。
そのうえで就活生に甘える社会人さんと同意見を持ちました。

常見氏の「就社~」は、一見すると様々なデータでバックアップがなされているように見えますが、そのデータ自体の信頼性に乏しく、さらに使い方を誤っている箇所が散見されましたし、話も飛び飛びで、著者自身の主張がはっきりとせず(しかしあらゆる方面に文句を言いながら)、「結局、若者はどうすればよいのか?」という解決策の提案もなされないまま終わっています。
「学生のための就活対策本ではない」と断っておきながら、「就活に落ちる学生はここがダメだ」と就活生を一蹴し始める態度には呆れましたし、常見氏が自身で課した本書への制約を常見氏自身が守れていないので、全体として構成に統一感がないように思いました。
Amazonのレビューを拝見しましたが、本の内容をそのまま鵜呑みにした方の高評価レビューが支持されているところにも違和感があります。(おそらく常見氏の信者によるものかと思われますが。)

これが、就活とは別分野の方が就活について語っているだけならば、特に気に留めることもありませんが、常見氏は自称“就活コンサルタント”であり、少なからぬ企業や就活生が常見氏の影響を受けざるを得ないことを考えると、私個人としては、就活の“現場”を混乱させるような常見氏の主張は看過できない所存です。

NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏は、日経新聞の記事で、意識高い系(笑)の学生を批判する大人に対する批判として、次のようなことを言っています。
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO62980660S3A121C1000000/?df=4

「昨今のネットでは、在学中に起業したりサークルを立ち上げたりして、それを盛り気味にアピールしている人たちを、皮肉を込めて「意識高い」とからかうスタイルが流行っています。こういうことを言っているオッサンたちは、基本、無視してよい。なぜなら、まともな大人は学生を嘲笑することに時間を使っている暇はないからです。働く大人にとって、時間はとても貴重です。その時間で本が読めたり、将来の起業のプランを練ったり、恋人の誕生日を祝ったり、息子と公園で遊べるわけです。そうした大切な時間を、赤の他人のために使いたいとは普通は思いません。しかし若者をディスりたい大人たちは、ままならない鬱屈を自分よりも年下のあなたにぶつけてスッキリしたいから、わざわざ時間を使ってコミットしてくるのです。」

批判するだけ批判して終わりの就活論客よりも、具体的かつ実践的な“若者支援の場”を提供し、若者の成長と自己肯定感の涵養を勧奨する駒崎氏のような方が語る就活論の方がよほど建設的ですし、説得力があるように思います。
常見氏の主張を真に受けると、若者や社会が現実を見ずにダメな方向に流されることが正当化されてしまうような気がしてなりません。

Re: No title

>両書とも読みました~とコメントしてくださった方へ

こんばんは、コメントありがとうございます。

>常見氏の「就社~」は、一見すると様々なデータでバックアップがなされているように見えますが、そのデータ自体の信頼性に乏しく、さらに使い方を誤っている箇所が散見されましたし、話も飛び飛びで、著者自身の主張がはっきりとせず(しかしあらゆる方面に文句を言いながら)、「結局、若者はどうすればよいのか?」という解決策の提案もなされないまま終わっています。「学生のための就活対策本ではない」と断っておきながら、「就活に落ちる学生はここがダメだ」と就活生を一蹴し始める態度には呆れましたし、常見氏が自身で課した本書への制約を常見氏自身が守れていないので、全体として構成に統一感がないように思いました。

そんな本書、著者の常見さんは「最新作は新卒一括採用、就活、および就社社会に関する論考の決定版だと自負している」らしいです(http://agora-web.jp/archives/1567406.html#more)。

>Amazonのレビューを拝見しましたが、本の内容をそのまま鵜呑みにした方の高評価レビューが支持されているところにも違和感があります。(おそらく常見氏の信者によるものかと思われますが。)

高評価レビューを書いた「マグロの人」さんは「沢山のデータから導き出された本書の内容を読み、改めて変に難しく考えることなく普通に働くことも大事だなと感じました」と書いていますね。正直あの本を読んでこのような感想を抱くのは理解しがたいです。あの本の大半は就活に関する言説の整理だったはずなので・・・。僕は「マグロの人」さんが本当に本を読んだのかどうかすら疑わしく思っています。そして、そのようなレビューが大いに支持されていることに唖然としています。

>NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏は、日経新聞の記事で、意識高い系(笑)の学生を批判する大人に対する批判として、次のようなことを言っています

事実上、思いっきり常見さんを切っている記事ですね(笑)まぁ、彼は批判されて当然でしょう。

No title

返信コメントありがとうございます。

>著者の常見さんは「最新作は新卒一括採用、就活、および就社社会に関する論考の決定版だと自負している」らしいです。

常見氏の著書を読んだのは初めてなのですが、表紙とオビの壮大な煽りに騙されてしまいました。
誇大広告に引っかかる私も問題だったかもしれませんが、「就社~」は、各章の構成がめちゃくちゃで、言葉の使い方があまりに雑(著述家としてのリテラシーに欠けています)なので読みながらイライラしましたし、最大の“ウリ”であるはずのデータによる裏付けも不十分なので、「読むべき価値がない」本だと思いました。

>僕は「マグロの人」さんが本当に本を読んだのかどうかすら疑わしく思っています。

おそらく「就社~」のひと月前に刊行された「普通に働け」という本の感想(主張そのまま?)が混じっているのではないかと思われます。
しかし、常見氏の提出したあの統計データを見て、「若者は起業などより会社員として働きたいという希望が強いということを示しています」と常見氏の思惑通りに感じて(あるいは常見氏の主張をそのままオウム返しして)しまっているので、本当に読んだのかどうか疑いたくなる気持ちはよくわかります。
「マグロの人」さんが、単にデータを扱うリテラシーがないだけなのか、読んではいないけれども常見シンパだからとりあえず支持しているだけなのか不文明ですが、やけに盲目的に礼賛しているのが不気味です。

また、リンク先(アゴラの記事)を読みましたが、これは「就社~」にあったものとほぼ同じ文章ですね。
「就社~」の文章がやたらとツギハギになっているのは、自身がウェブに寄稿したものをそのまま寄せ集めてきたからなのではないでしょうか。
常見氏は、このところ立て続けに新書を出しているようですが、だからこそ、ひとつひとつの本の内容にはそこまで気を使っていないのでしょうね。(それをスルーする編集側の問題もあるのでしょうが。)

Re: No title

>返信コメントありがとうございます~とコメントしてくださった方へ

こんばんは、コメントありがとうございます。

>「マグロの人」さんが、単にデータを扱うリテラシーがないだけなのか、読んではいないけれども常見シンパだからとりあえず支持しているだけなのか不文明ですが、やけに盲目的に礼賛しているのが不気味です。

ちなみにこの「マグロの人」さんは斎藤正明さんという方です(https://twitter.com/yoheitsunemi/status/390328747578363904)。そして、その斎藤さんは常見さんと対談をしたことがあったりします(http://www.excite.co.jp/News/column_g/20130423/Cobs_il_201304_-1-22.html)。「常見さんと関わりがあるから本を高評価しているんだろ」という結論に即座に飛びつくのは短絡的かもしれません。しかし、彼のレビューの中身を見る限り「常見シンパ」と表現しても当たらずと雖も遠からずと言えるでしょうか。

>また、リンク先(アゴラの記事)を読みましたが、これは「就社~」にあったものとほぼ同じ文章ですね。「就社~」の文章がやたらとツギハギになっているのは、自身がウェブに寄稿したものをそのまま寄せ集めてきたからなのではないでしょうか。

確かに、本を読みながら「これ、見たことあるな」と感じたことが何度かありました。例えば、本書のp.186-190で書かれている「最終面接で落ちる理由」については「なぜか最終面接で落ちてしまう人の7つの理由(http://www.s-shiori.com/con3/archives/2011/05/7-1.html)」、「なぜ、最終面接までは行けるのに内定が出ないのか?(http://www.s-shiori.com/con3/archives/2013/09/post-219.html)」というページでも同様のことが書かれています。また、p.72-79で書かれている「要件が緩和されつつある新卒一括採用」については「avexの"志"一括採用で考えた、既卒者の採用の現状(http://www.s-shiori.com/con3/archives/2013/07/avex.html)」というページにも同様のことが書かれています。時間があったら、本とウェブページを読み比べてみると面白いと思います。
 
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