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「"就社志向"の研究」から見られる「マッチポンプ」という視点(2)

常見陽平さんは2010年に出した「くたばれ!就職氷河期」という本で「就活断層」という概念を提唱した。この概念が示す現象は次のようなものである。

大手企業は学生全てに「私の会社は~な良いところがあります!」とPRするが、実際には一部の上位大学の学生しか採用する気がない。にも関わらず、上位大学の学生のみならず中位・下位大学の学生も大手企業を目指そうとして、中小企業には目を向けない。人が欲しい中小企業はあるのだが、大手志向の学生は中小企業に目を向けないので、そこですれ違いが発生してしまっている

新聞などで、リクルートワークス研究所のデータを参照した上で「大企業はともかく、中小企業の求人倍率は高い」と主張する文章を目にしたことがある人は少なくないだろう(例えば、日経の「中小企業への就職を促そう」という記事など)。ここでいう「中小企業の求人倍率は高い」という文言は就活生が中小企業を志望しない傾向があることを暗に訴えているし、「就活断層」も就活生が中小企業に目を向けないことを前提とするコンセプトと言える。


常見さんはこの「就活断層」が存在することを証明するにあたって、本の中で「学生は大手企業・有名企業しか受けない」という見出しを設け、学生がいかに中小企業に目を向けていないかを論証した。その論証の際に根拠として使われた資料の一つが、上記の新聞記事でも参照されたリクルートワークス研究所のデータである。本で言っていることも新聞と同じで、「大手企業の求人倍率は厳しいけれど、中小企業の求人倍率は高い。学生は大手・人気企業志向だね」という主張だ。常見さんはこのデータに触れた上で次のように述べる。

この人気企業ランキングと規模別の求人倍率で考えるならば、学生は大手企業、人気企業を中心に就活をしていることが顕著となる。「就活が上手くいかない学生は、憧れから総合商社や広告代理店を一通り受けて全滅。5月になって持ち駒がなくなり、就活にも疲れ、活動を辞めてしまう」という声をよく耳にする。

つまり常見さんの話をまとめれば「学生は大手志向であり、その大手を落ちた結果として疲れて就活を止めてしまう(つまり、中小企業を受けずに終わる)」ことになっている。本には他にも「"大学関係者によると、納得して中小企業を受ける学生はまだまだ少ない"ということだ」という記述があり、いかに学生が中小企業を敬遠しているか、それが問題の根幹(の一つ)であるかを強調していると言える。


「学生は大手企業・有名企業しか受けない」ことを主張してきた常見さん。しかし、こうした論調に疑問を呈する声もあり、それは当ブログにもアップされた。「11卒業務未経験無職」さんという方は「大企業志向で中小企業を受けないことが就職難の原因か」という記事を書いてくださり、常見さんが言ったような主張に対する疑問を表現した。


その記事で指摘されたのは、「調査データ(※リクルートワークス研究所のデータのこと)のp.10の一番下に、*で、各従業員規模と各業種への就職希望率は、第一希望の情報をもとにしていると記載されています。そりゃあ、第一希望を聞かれたら、内心では大企業に入るのは難しいと思っている人でも、高望みして答えてもおかしくないのでは」・「この調査の対象なっているのはリクナビ会員で、実施時期が就活が本格化しはじめる2月6日~3月15日頃の調査となっていますが、掲載料等の関係から大企業が利用していると言われているリクナビを就職活動本格化する時期から利用していて、尚且つこういった調査アンケートに答える層というのは少なくとも就活に対する意識が平均以上にある人たちだと思います。そういった人たちにアンケート就活が本格し始める段階で、第一希望の企業規模を質問すれば、そりゃあ企業規模が大きいところを選ぶのではと思います」という点。簡単にまとめると、リクルートワークス研究所のデータ上「学生が大手志向で中小企業は敬遠しがち」という結果が出るのは、そのデータの調査形式・調査時期に拠るところが大きいのではないか?という主張だ。これは納得できる指摘ではないか。


僕個人はこの指摘を受けて「指摘はもっともだな。一方で常見さんの分析はおかしい」と思っていた。しかし、ここ最近ブログで取り上げている常見さん著の「"就社志向"の研究」を読んだことで認識が変わる。具体的には、常見さんの論調に変化が見られたのだ。「"就社志向"の研究」には次のような文章がある。

また、毎年、このデータ(※リクルートワークス研究所のデータのこと)で話題になるのは学生の大手志向、さらには人気企業志向であり、安全・安定志向であり、セットで中堅・中小企業の志望者の増減が話題になるのだが、これもほぼ不毛な議論である。というのも、若者は最終的には中堅・中小企業に進んでいるからである。あくまで就活が始まる初期段階でのデータなのだ。その段階では大手企業しか認知することができないわけで、当然そうなるのだ。(p.97)

特に「あくまで就活が始まる初期段階でのデータなのだ」という点はまさに「11卒業務未経験無職」さんが指摘していたことだ。したがって、この主張自体には異論はない。


問題なのは、リクルートワークス研究所のデータを根拠に学生の大手志向・中小企業の志望者の少なさを話題することを「ほぼ不毛な議論である」と評している他ならぬ常見さんこそ、こうした議論を展開した張本人の一人だったはずだという点。それは、この記事の前半部を読み返してもらえれば分かるはず。「くたばれ!就職氷河期」と「"就社志向"の研究」の記述を見比べると「これ、本当に同じ人が書いたのか?」と疑問に思ってしまうくらいだ。


繰り返すが、「"就社志向"の研究」で展開されている主張そのものは妥当だと僕は思う。よって、この主張のみを目にした人が「常見さんは問題を的確に分析している」と感じてもおかしくないと思う。しかし、「くたばれ!就職氷河期」で展開していた主張を知ると、常見さんに対して「自分こそリクルートワークス研究所のデータを根拠に"学生が大手志向で中小企業を受けない"ことを主張してきたのに、ここにきてそ知らぬ顔でその主張を"不毛な議論である"とか言ってるんじゃないよ」という気持ちが芽生える。僕としては「これはただのマッチポンプじゃないか?」と思わずにはいられない。

リクルートワークス研究所のデータを根拠に学生の大手志向・中小企業の志望者の少なさを話題することを「ほぼ不毛な議論である」と評している他ならぬ常見さんこそ、こうした議論を展開した張本人の一人だったはずだという意見に共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします
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そりゃこの人は就活系のネタで本出しまくってますから(内容の無い)矛盾点はまだ沢山あると思いますよ。

あれは人事か人材派遣系サラリーマンの居酒屋でのグチレベルです。

頻繁に登場しますが実際はエントリーとして取り上げる価値すら無い人物ではないでしょうか?

Re: タイトルなし

>名無し さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>そりゃこの人は就活系のネタで本出しまくってますから(内容の無い)矛盾点はまだ沢山あると思いますよ。あれは人事か人材派遣系サラリーマンの居酒屋でのグチレベルです。

正しい評価だと思うのですが、なぜか常見さんを評価する人もいるみたいなので、常見さんの記事を否定的に取り上げる意味はあるのかなと・・・。ちなみに、常見さん本人も「矛盾も多くなってきていないか」という指摘を「まったくその通りである」と認めています(http://blog.livedoor.jp/yoheitsunemi/archives/54515133.html)。それでいいのかという話ですが(笑)

No title

常見さんは一応2012年のブログ記事でもリクルートワークスの調査を全面肯定していないという書き方をしています。
http://blog.livedoor.jp/yoheitsunemi/archives/54274481.html
また、中小企業なら内定を取りやすいわけではないとも書いてありますw

常見さんの解釈も確かにと言えるとは思いますが、■「中堅・中小企業を志望する若者が増えている」のウソという部分ではなんか引っかかる部分があります。
この調査やマイナビの調査からは「中堅・中小企業を志望する若者が増えている」とは言えないが、「中堅・中小企業でも良いという人」は増えているとは読み取れると思いますし、就活本格化前からキチンと就活サイトに登録していて、わざわざアンケートに答える層がこう答えていることは結構大きい事だと思います。(2013年卒者以前もそうだと思いますが、企業規模よりブラックかどうかに焦点が集まっているというのもあると推測しますが)
(文化放送キャリアパートナーズの資料は詳しいところを見るためには資料請求が必要なようなのでこれ以上なんとも言えませんがhttp://www.careerpartners.co.jp/sjk/#data)

同時に、常見さんは自分の論を補強するための資料はそれほど注意して読み解きませんねとも思います。


そもそも常見さんは就活生向け、社会人向け両方の面からの記事を書き、加えて両方の面からの真面目な記事とネタっぽい記事の両方を書いているためlingmuさんの記事にあるようなマッチポンプのような状態になっているように思います。(実際、常見さんの主張には良いものもあると思います)
実際に企業・大学の双方の仕事をしているという事もあり、片方のみの記事を書くのは難しいのかもしれませんが(単に仕事を増やしたいのかもしれませんが)
また、常見さんはどう思っているか分かりませんか、現状の就活の状況が多少なりとも変化したとしても根本は変わらない事が常見さんにとって最大のメリットになると考えられる事が、更に主張が訳の分からないような状況にしていると思います。

個人的には、頻繁に常見さんが取り上げられているという現状があるので、lingmuさんがたびたび取り上げたくなる気持ちも分かります。

Re: No title

> 11卒業務未経験無職さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>この調査やマイナビの調査からは「中堅・中小企業を志望する若者が増えている」とは言えないが、「中堅・中小企業でも良いという人」は増えているとは読み取れると思いますし

そうですね。常見さんの解釈はひねくれているという印象です。

>そもそも常見さんは就活生向け、社会人向け両方の面からの記事を書き、加えて両方の面からの真面目な記事とネタっぽい記事の両方を書いているためlingmuさんの記事にあるようなマッチポンプのような状態になっているように思います

なるほど。ただ、今回の件に関しては「くたばれ就職氷河期」と「"就社志向"の研究」を目にする人は同じ層である可能性が高い以上、おっしゃる様な理屈は当てはまらないのではないかと思いました。

No title

>なるほど。ただ、今回の件に関しては「くたばれ就職氷河期」と「"就社志向"の研究」を目にする人は同じ層である可能性が高い以上、おっしゃる様な理屈は当てはまらないのではないかと思いました

確かに今回の「"就社志向"の研究」から見られる「マッチポンプ」という視点(2)の場合ではそうだと思います。
常見さんの主張全般に対して思う事として等と補足するべきでした。

Re: No title

>11卒業務未経験無職さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>確かに今回の「"就社志向"の研究」から見られる「マッチポンプ」という視点(2)の場合ではそうだと思います。 常見さんの主張全般に対して思う事として等と補足するべきでした

同意していただけて良かったです。ありがとうございます。
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