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「脱社畜の働き方」・「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”」のレビューを書きました

今回のレビューは、日野瑛太郎さん著の「脱社畜の働き方」・山田昭男さん著の「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”」です。なお、下記のレビューでは触れていませんが「脱社畜の働き方」には「仕事のための仕事のような意味のないものを排除して、本当にしなければならない仕事のみを集中して行うようにすれば、週に3日休むのぐらいは十分達成可能なのではないか(p.238)」という記述があります。そして「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”」には、この記述をほぼ実践したと言えるような例が載っています。その意味では、今回取り上げた2冊の本には多少の関連性があると言えるかもしれません。


●「脱社畜の働き方」(評価:星2つ)

陳腐な問題提起。展開されるのは抽象論ばかり。全体的に質が低い1冊

日本の労働環境・仕事観に疑問を呈した上で、著者の起業体験記・会社外でお金を得るための方法・著者が考える理想の社会と話が進んでいく1冊です。日本の労働環境の問題点を指摘しようとする著者の試みには共感できるのですが、それでも本書を高評価することは出来ませんでした。いくつか理由はあるのですが、その中で本書のメインパートである「日本の労働環境・仕事観への疑問」に関する文章の難点を書きます。


1. 問題提起の内容が陳腐


本書における日本の労働環境・仕事観に関する問題提起は「陳腐」です。実のところ、著者の主張そのものは分からなくはありませんでした。しかし、本書で書かれている議論の多くはネットで「労働環境 おかしい」と検索すれば出てくる程度のものです。あるいは、メイロマさん著の「日本が世界で一番貧しい国である件について」・今野晴貴さん著の「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」で提起された議論と内容はほとんど変わりません。他レビューで本書を「どこかで読んだような内容と感じられる箇所も多い」と評するものがありますが、これは的確な評価だと思います。


もっとも、問題提起の内容がありふれているとしても、日本の労働環境のおかしさを示すエピソードが多く盛り込まれているのならば、そこに価値を見出すことは出来ます。しかし本書はエピソードがほとんど語られず、抽象論が展開されることが多いのです。例えば「"社会人なら○○して当然"とか"□□ができないやつは社会人失格"とか、こういう表現を聞いたことは無いだろうか(p.40)」と著者は問題提起するのですが、その後著者はなぜか「試しに、これらのテンプレート表現を利用して、理不尽を強要するフレーズを作ってみよう」と話を進めます。率直に「なんで、自分の経験を書かないんだろう?」と疑問に思いました。あるいは、有給休暇の話でも「他人が有給を取得しようとしていると、"休暇を楽しんでおいで"と気持ちよく送り出す人はあまりおらず、すぐに"この忙しいのに、常識が無い"とか"あいつのせいで、負担が増える"とか、そういった非難が先行する(p.47-48)」と、エピソードを用いずに抽象的な言い回しに留める記述が見られます。


著者は「(自分が)たまたまとんでもない会社に入ってしまったというだけなのだろうと思い、転職を試みようとしたこともあるのだけれど、どうも他の人の話などを聞いていると、日本の会社はどこも大体同じような感じらしい。むしろ、お前の会社はかなりいいほうだ、とまで言われて僕は初めて社会に絶望したものだ(p.170)」と言っているのでエピソードを紹介する余地は大いにありそうなものですが、上記のようになぜか展開されるのは主に抽象論です。これでは、本書の問題提起の中身を「陳腐」と評さざるを得ません。


2. 問題提起が抽象論だらけ。著者の議論に説得力が感じられない。


上で本書の問題提起が抽象論であることを記しましたが、それは同時に「何となく当たってそうな気はするけど、本当にそうなの?」と著者の議論の妥当性への疑問をもたらします。


どういうことかというと、例えば本書にはデータ・統計がほとんど見られません。「有給休暇を使い切る労働者の割合」の国際比較くらいではないでしょうか。amazonにある本書の内容紹介には「日本には"働くことは尊い""会社のために尽くすことは素晴らしい"といった仕事に対する独特の価値観があります」とあるので、「じゃあ独特ではない、普通の価値観は何なの?(海外の労働環境・仕事観はどうなってるの?)」という疑問を抱いたのですが、その答えは本書にはほぼ皆無です(「海外の一部の国では有給休暇とは別に病欠用の"シックリーブ"という休暇がある」という記述はありますが、これはこれで「"海外の一部の国"って具体的にどこですか?」という疑問を持ちます。本書はこんな抽象論ばかりです)。


また、著者の分析・議論が独りよがりだと感じられる箇所が見られます。例えば「そもそも通勤中のサラリーマンは、なんでこんなにつらそうな顔をしているのだろうか。原因は単純に電車が混んでいることだけではないと思う。何度か、早朝の空いている時間の電車に乗って会社に行ったこともあるが、それでも通勤中のサラリーマンが疲れてつらそうな顔をしていたことには変わりがなかった。一方、休みの日に行楽地に向かう電車は混んでいるけど、そのときはみんなつらそうな顔をしていない。車内が混んでいてつらいから、という理由だけでサラリーマンが渋面を創っているとは考えにくい。これはやはり、会社に行くこと自体に人を気落ちさせる要素があると考えるしかないだろう(p.23)」・・・完全に著者の独りよがりな主観ですね。あるいは「幸せになるならみんなでならなければダメだ、それが叶わないならむしろ全員で不幸になった方がいい・・・こう考えて行動していると思われる人が日本の職場にはたくさんいる(p.64)」という主張が何のデータもエピソードも紹介されることなく展開されています。「たくさんいる」ってどのくらいいるのでしょうか?本書からは分かりません。


全体的に、著者が「労働問題の専門家」じゃないことを差し引いても内容が酷いと思います。現状分析の質の甘さをエピソードでカバーできているならまだしも、上述のようにそれも出来ていません。学術的価値もエンターテイメント性もない、非常に中途半端な1冊です。著者が問題についてきちんとした勉強や調査をしたという形跡があまりにも感じられず、個人的には「ネットや本にあった議論・話をそのまま右から左に流しただけなんじゃないか?」という印象を持ちました。


その他「第5章は著者の"こんな社会になったらいいな"という願望がだらだらと書かれているだけで中身が無い」という欠点もあったりするのですが、他方で「陳腐とはいえ、問題提起の内容自体は正しい点もあること」・「第4章のプライベートプロジェクトについての文章は、会社外でお金を得るための方法を学ぶに際して出発点としては良さそう」と感じたことから(あるいは人によっては「著者の起業体験記」を面白く感じる人もいるかと思います)、星1つでは評価が辛すぎると考えてギリギリ星2つにしました。ただ本心としては、可能ならば「星1.5」という評価をつけたかった1冊です。全体的に本書に1580円の価値があるとは思えず、購入は薦めません。 


●「日本一社員がしあわせな会社のヘンな"きまり"」(評価:星4つ)

"徹底した差別化"という価値観が生み出す上質な労働環境

本書で取り上げられている「未来工業」は政府系機関から「日本一勤務時間が短い会社」と認定された会社なのだそうです。就業時間は8時半から16時45分までの7時間15分で、且つ残業は禁止。その上、休日は年間140日。だからといって、給料が安いわけでもない(著者曰く「高くも無いけど安くもない」そうです)。タイトルにある「日本一社員がしあわせな会社」という文言にも頷けます。


最近、新語・流行語大賞を受賞した「ブラック企業」は社員を使い潰すことによって利益を得る企業であるとされています。それに対して未来工業は「人間をコスト扱いするな(p.91)」という考えの下、きちんとした待遇を社員に用意することで社員のやる気を上げ、その結果会社の利益を出そうとするやり方を採用しています。そして、そのやり方で利益は出ています。


ただ、勿論このような恵まれた環境が天から降ってきているわけではありません。未来工業を貫く価値観は「徹底した差別化」というもの。他社がやっていないレベルで徹底的にコストを削り、それにより生まれた利益を社員に還元することで、上記のような上質な労働環境を実現しているのです。その「徹底的にコストを削る」ことについても、未来工業には「改善提案制度」という、会社をよくするための提案を紙に書いて出せばお金がもらえる制度があります。つまり社員が案を考えるインセンティブはきちんと整っており、且つ自分の提案が採用された場合職場環境全体が改善されることもあり得るわけですから、ひいては皆にとってプラスになるという訳です。


本書には未来工業の「差別化」の内容がたくさん詰まっています。日本の労働環境が語られる場合「他国と比べて異常」という方向に話が進んでいることが多いと思いますが、未来工業のように優れた経営をしている企業のやり方について考えてみることももう少し必要なのではないかと感じます。

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