スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

過労死ラインを超える時間の三六協定をも受理する国

今月21日に、「新興プランテック」という会社に勤務していた男性が過労自殺した件に関する裁判の判決が下された。この件では、会社と労組が150時間、繁忙期には200時間まで残業を延長できるとする三六協定を結んでいて、男性は2008年6月に月160時間、7月に210時間を超える残業をしたことが原因で命を絶つに至った。男性の母親は毎日新聞の取材に対して「過労死ラインを超える残業を受け付けるのはおかしい。きちんと見直すべきだ」とコメントしている。


肝心の判決の中身だが、東京地裁は、会社には安全配慮義務違反があったとして2270万円の支払いを命じたのに対して、国と労組への請求は棄却した。毎日新聞によると、国と労組への請求は裁判の焦点と言えるものだったらしい。具体的には、労基署の責任が認められるかどうかが裁判の一つのポイントだったということなのだと思う。


2011年2月の日経新聞の記事によると、この裁判の原告側弁護士は、月200時間という残業協定を会社側に是正を求めないまま受理したことをもって労基署の責任を問う方針を固めていたことが分かる。前回の記事でも触れたように、直前の1ヶ月に100時間以上の残業・直前の2~6ヶ月に平均80時間以上の残業をしていれば厚生労働省が定める「過労死ライン」を超過していることになる訳で、勿論月200時間というのも余裕で過労死ラインを超えている。原告側弁護士からすれば「なんで、そんなものを受理したの?」という問題意識があったということだろう。


これは前回の記事のコメント欄でwilliam yaminさんが述べていた疑問でもあった。

そもそもなんで厚生労働省が定める基準を超える労働時間を定めた36協定を労働基準監督署が受理しているのかという点も疑問です。労働者代表選出の妥当性についてはすぐに判断するのは難しいにしても、設定された時間が基準内かどうかなど一目瞭然のはず。基準を超えた内容の届け出など突っぱねるということは出来ないものなのでしょうか。それとも労使合意に省庁が口を出すべきでないというスタンスなのでしょうか。それこそ実態に即してないと思うんですが。

「新興プランテック」のケースで言えば、東京新聞が「過労社会 止まらぬ長時間労働<中> 月200時間招いた死 残業規制"例外"で骨抜き」という記事で取り上げた次のような事情が答えとなる(http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-3649.html)。

新興プランテックのような建設業は労基法の長時間労働規制の対象外とする「例外規定」があるからだ。トラックやタクシーの運転手も同様で、労使の合意があれば何時間でも働かせることが可能だ。そのせいか過労が原因とされる脳・心臓疾患の労災認定数は、運輸業と建設業が毎年上位を占める。例外規定を設けている理由を厚生労働省は「納期前などに仕事が急増する可能性がある業種だから」と説明する。遺族代理人の川人博弁護士は「どんな仕事にも繁忙期はあり、一部の業種のみ特別扱いする理由はない」と反論する

なお、この東京新聞の記事だがこの後「業種による例外だけではない」と、一般論として労使合意に基づく協定を結んでいる限り、現行法上労働時間が青天井になり得る旨を指摘している。この点について、例えばposseの今野晴貴さんはsession-22というラジオ番組において、荻上チキさんからの「なんで月300時間の三六協定を国は受理するのか」という問いかけに対して「(受理を拒むための)法的な規定がない」と答えていた。また少し調べてみたところ、この点に関して次のような解説を目にした(http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20131015 なお、ブログ記事本文ではなくコメント欄の記述です)。

Yosyan先生が言及されているように、三六協定と労基署の関係は、法律上は「届出」であって「許可」ではありません。ですので、労基署は届けられた三六協定について受理を拒否することが出来ません。どんなトンデモ長時間の協定であっても、労働者代表が協定を応諾した署名捺印などが揃っていれば、労基署は受理せざるを得ません。ただし、労基法36条の規定とその詳細を定めた労基則16条、16条の2、17条の規定に反する協定、すなわち労働者の過半数代表の選出に疑念がある場合、労働者代表の捺印が捏造と疑われる場合、1年を越える期間について定めた協定、適用対象となる業務の種類や従事する労働者の特定が為されていない協定などは、届出事項の「不備」として不受理とされます。ですが、特別条項を加算した場合の、年間の延長労働時間の長さをもって不受理とする、労基法上の根拠はありません

・・・と、こういうことらしい。さらに前回の記事で「william yamin」さん・「toito」さんへのコメント返信の中で紹介した解説に加え、労働政策研究・研修機構の研究員・濱口桂一郎さんの「労基法32条の上限(1日8時間、週40時間)は36条の労使協定によって法律上上限なく延長できる」という解説をも踏まえると(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg2/koyo/131011/item3.pdf)、十中八九「労基署は、労働時間の長さを理由に三六協定の受理を拒否できない」という理解で間違っていないのだと思う。そして、この理解が正しいのならば、前回の記事の主張と重なるけれども、現行法上のルールの不備を特定し、それを是正するというアプローチが求められると言える。

「過労死ライン」を超過した労働時間も合法な現状のルールの是非を問い直すべきだという意見に共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村  
このエントリーをはてなブックマークに追加  
ブログにfeedly登録ボタンを設置してみました!登録はこちらからどうぞ。  
follow us in feedly     
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

やっぱりこの国は狂ってますね

(サラリーマンとして)働いた負けというのがよく分かる事例ですよね。

No title

この企業自体を擁護する気はないと最初に書いておきます(同時にlingmuさんの記事内容自体には同意です)

ルールもそうなんですが、下請けが前提の典型的なピラミッド式の構造になっている業界の場合、上の層にいる企業に締切はいつまでだけど、残業は○○時間までにしてと言われると下請け的な企業は実質的にサービス残業をしなければならない状況になると思います。
断れば、今後仕事が減ったり、なくなったりすることは目に見えてますし。
建設業に関しては、少し前にこういった記事(http://toyokeizai.net/articles/-/25280)も出ていましたが、正直製造業などのほかの業界も大して違いはないと思います。
建設業の雇用条件自体、多少は良くなっているみたいですが(http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013121602000128.html)、上の層の企業に負担をと言っても、今回のlinmuさんの記事や記事中に引用されているブログの記事のように多分業界の構造の中でも上の方の会社でもきつい事になっていると思うとどうするべきなのかなと思います。

この辺は海外(日本と経済規模的に近い国)はどうなっているのか気になります。

記事の趣旨とコメント内容が微妙に違っていて申し訳ないです。

Re: やっぱりこの国は狂ってますね

>さいてぇ さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>(サラリーマンとして)働いた負けというのがよく分かる事例ですよね。

まぁ、過労死ラインを超える水準の労働時間でもOKというのはまずいですよね。

Re: No title

>11卒業務未経験無職さん

こんばんは、コメントありがとうございます。

>ルールもそうなんですが、下請けが前提の典型的なピラミッド式の構造になっている業界の場合、上の層にいる企業に締切はいつまでだけど、残業は○○時間までにしてと言われると下請け的な企業は実質的にサービス残業をしなければならない状況になると思います

そうですね。むしろ、規制を嫌がる企業もあるかもしれません。記事本文で触れた厚生労働省の理屈のように、一見おかしな例外規定にも一応存在意義があるとされているので、その意義を考慮した上で「意義は認めるけど、おかしい」・「そもそも、厚生労働省の言う"意義"がおかしい(これは川人博弁護士が採ったアプローチですかね)」といった主張をする必要があるでしょう。
main_line
main_line
ブログランキング
おかげさまで、ブログ村の「就職バイトブログ」のカテゴリで「1位」を取ることが出来ました。この場を借りて、お礼を申し上げます。これからも記事を多くの人に読んでいただけたらと思いますので、もし宜しければ、今後ともランキングへのご協力を宜しくお願いいたします。
RSSリンクの表示
follow us in feedly 
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンク
FC2カウンター
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
プロフィール

lingmu

Author:lingmu
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。