スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「経団連加盟企業の7割が、採用活動において年齢に関して要件を設けてない」という主張への疑問

前回の記事と同様、茂木さんと常見さんの対談「日本の大学教育はこれでいいのか? 茂木・常見のデスマッチ」を取り上げたい。対談開始から11分過ぎ・15分過ぎくらいから、次のようなやり取りがなされている。

茂木:あなたは年齢とかで、あるいは卒業年次で、採用を制限することが良いと思ってるんですか!?

常見:(前略)これは経団連の調査なんですけれども、今採用活動において年齢に関して要件を設けてない会社が、経団連の調べによると、経団連加盟企業の中、つまりそこは大手企業中心なんですけども7割がそうです。

(中略)

茂木:事実としてさ、丸の内に本社があるような、所謂一流大学卒の人がみんな入りたがっていると言われているような大手企業の採用要件というのは、相変わらず年齢制限とか新卒○年見込みとかそういうのがあるんじゃないですか?

常見:結論から言うと、ほとんどNOです。これが答えです。丸の内にあるような大手企業というのはほとんど所謂・・・

茂木:これ学生に聞いてみればいいじゃん?

池田:アンケート取りましょう。yesかnoかで答えられるように(中略)「私は新卒じゃないので応募できなかった、要するに差別されたという経験」があるという人がyes、無いという人がnoということでいきましょう・・・おぉ、59も(yesが)あるじゃん。

常見:だからこれね、要は体験談としての事なんだけど、さっきの話で言うと経団連のデータでは7割がそうだと言っているということと、だけど実際の運用ではこうだということです。ただしこれでも全部がそうですかというと4割が良いと言ってるじゃないですか(※要は「既卒者を受け入れているじゃないですか?」ということ・・・?)。だから今多様化してる過程なんですよ

ちょっと常見さんが何を言っているのかよく分からなくなってきた感があるけれど、今回の記事では常見さんが触れている経団連のデータについて取り上げたい。


経団連は去年の7月に「新卒採用(2012年4月入社対象)に関するアンケート調査結果の概要」をホームページで公開している。そして、その概要の中には「7.既卒者の採用の実施状況」という項目がある。その項目の中にある「(1)既卒者の応募受付」というグラフを見てみると、69.8%が「実施している」と答えていることが分かる。恐らくこれが、常見さんが言う「7割」という数字の根拠だろう。


しかし、このデータを根拠に「採用活動において年齢に関して要件を設けてない会社が7割」と言って良いのかは疑問だ。なぜなら、一言で「企業が既卒者からの応募を受け付けている」と言っても、俗に言う「卒業後3年以内」という言葉が象徴するように、卒業年度によっては既卒者が応募を受け付けてもらえないことが大いに考えられるからだ。


ここで同じく経団連のデータを見ると、「(1)既卒者の応募受付」のグラフが掲載されているページに「(3)応募受付の条件(卒業後の年数や就業経験の有無など)」、「(4)応募受付の条件の内容」というグラフが掲載されていることに気づく。それによると、応募受付の条件をつけている企業は、本設問に回答した企業数506社の内の68.2%に達し、且つ、応募受付の条件があると回答した345社の内の78.3%が「卒業後の年数」を応募条件として設けていることが明らかになっている。結果として、「卒業年数を条件にしている」と回答したのは270社であることが「(5)卒業年数の条件」のグラフから分かる。


さて、この経団連の調査に回答した企業数は582社であった(ちなみに調査対象は1285社で、即ち回答率は45.3%にとどまった)。その場合、常見さんの「7割は年齢制限を設けていない」という主張が正しいのならば、582×0.7=407社が年齢制限を設けていないということになる。ところが、上述のとおり「卒業年数を(応募の)条件にしている」と回答した企業数は270社に達しているわけで、この要素を考慮した時点で「582社中、407社が年齢制限を設けていない」という主張が成り立たなくなってしまう。常見さん・・・。


仮に常見さんが「経団連のデータ上、7割の企業が既卒者からの応募を受け付けています」と言っていたならば、その発言は正しいものだと言えると思う。しかし、企業が「卒業後の年数」を応募条件に課している状況があることを踏まえると、「採用活動において年齢に関して要件を設けてない会社が7割」という表現を用いるのは不適切なのではないか。


これは僕の推測だけれど、そもそも茂木さんが「年齢とかで、あるいは卒業年次で、採用を制限すること」を全面的に批判している立場であることは彼の発言から自明な訳で、これに対して「経団連のデータによると、卒業後3年以内の人を受け付ける企業は多くあります」と正直に言ってしまったら、茂木さんから「だから俺は、卒業年次で採用を制限することがダメだって言ってるだろ」と返されてしまうから、だから常見さんはあえて「採用活動において年齢に関して要件を設けてない」という表現を用いたのかなと思っている。そんな思惑があったか無かったかは知らないが、結局茂木さんは常見さんが援用した経団連のデータについて「そもそも年齢制限を設ける会社が違法だって言ってるんで、7割がどうなってるとかいうのは実は本質的じゃないんですけどね」とつっこんでいる(対談開始から13分30分頃)。これは、その通りだろう。


前に海老原嗣生さんの文章を批判した際にも同じようなことを書いた気がするけれど、論者と言われる人がデータに基づいて話をしていたとしても、そのデータの扱い方に誤りがあることは十分考えられる。また、予防線を張るわけじゃないけれど(といいつつ、思いっきり張る訳ですが笑)、僕のデータの読み取りにも誤りがないとも言い切れない(あったら、この記事の内容が全て崩壊するわけですが・・・)。だからこそ、根拠が明示されている主張であっても、それが違和感を覚えるものである場合は、一次資料に目を通すことが大事になるのだと思う。

「経団連加盟企業の7割が、採用活動において年齢に関して要件を設けてない」という主張はおかしいのではないか?という意見に共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村 
このエントリーをはてなブックマークに追加    

厚労省「労働者一人一人に均等な働く機会が与えられるよう雇用対策法を改正し、募集・採用における年齢制限を禁止した。ただし、例外アリ」

少し前の過去記事「茂木健一郎さんの"日本の大学教育・大学入試"に対する憤りはもっともだ」に、茂木さんと常見さんの対談の動画を貼り付けた。その動画の8分過ぎくらいから二人が「新卒一括採用」が適法か否かを議論されているのだが、まずは両者の主張を紹介したい。

茂木:年齢やキャリアで、就職の入口で「あなたには当社を受ける資格がありません」ということは、僕の中での、僕一応法学部出てますが、法的秩序の感覚から言うと違法なんですよ。

(中略)

常見:採用の自由って判例があるんですよ。法学部をその当時出てたらご存知だと思うんですけど、三菱樹脂事件って判例ってご存じですよね(※ちなみに僕も過去記事「三菱樹脂事件という"企業の採用活動の自由"に関する判例~"あなたは就活デモに参加していたから不採用"と企業が考えるのもOKか~」でこの事件について取り上げたので、興味がある方はそちらも併せて読んで頂ければと思います)。

茂木:いろいろ人権法則ってのがあるわけですよ、国際的に今考えられている。(その人権法則は)社会の変化とともに変わっていくものですよね。公共の福祉とかいろんな言葉を使うけれども、それに反しない限り採用の自由があるわけで。例えばある会社が「男しか取らない」、ある特定の理由があるなら別だけども、今の社会で「男しか取らない」と言ったら、採用の自由と言ったってそれは違法ですよね(中略)僕はそれと同じくらい「ある年齢」、あるいは「ある年度に卒業する見込みの者」しか採らないということは、僕の感覚の中では、恐らくこれは僕の感覚だけじゃなくて恐らく諸外国の労働に関する法令を見たら同じような傾向があると思うんですけども、違法なんです。

常見:今回法律のことを言っているから、感覚ではなくあくまでも判例で話すべきだと思うんですね(以下略)

見ての通り、茂木さんは新卒一括採用を違法だと言っていて、常見さんは判例を根拠に茂木さんの主張を退けようとしている。一見常見さんが冷静な議論をしているように思えるけれど、本来茂木さんの主張に異議を唱えるにあたっては、茂木さんに対して「違法って言うけど、どの法律の第何条に違反してるんですか?」と問うべきだった、即ち条文に立脚した反論をするのが適切だったのではないかと考える。そして、茂木さんが問題視する「年齢による差別」に関連する条文とは、雇用対策法の第10条である。同条文は次のように規定している。

(募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保)
第十条  事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない

厚生労働省は、この条文の趣旨を次のように説明している(http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/20070925-kintou.html)。

これまで、募集採用に係る年齢制限の緩和については努力義務とされてきました。しかし、依然として年齢制限を行う求人が相当数あり、高年齢者や年長フリーターなど、一部の労働者の応募の機会が閉ざされている状況にありました。そのため、このような状況を改善し、労働者の一人一人に、より均等な働く機会が与えられるよう、雇用対策法が改正され、募集・採用における年齢制限が禁止されました。

これらを見ると「茂木さんの言うことが正しいんじゃないか。やっぱり常見さんはダメだ」という気がしてくる。確かに常見さんの主張がダメなのは事実なのだが(動画を開始20分過ぎくらいまで見直したけれど、その時点までに少なくとも誤りが2つあるように僕には思える。それについては近いうちに書きます)、残念ながらこの法律の存在をもって茂木さんの主張を正しいということは出来ない。なぜなら、この法律には「雇用対策法施行規則第1条の3」という例外が存在するからだ。


これは「合理的な理由があって例外的に年齢制限が認められる場合」を定めた条文で、年齢制限が認められる場合の一つに「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」が含まれていることが重要である(http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/shokugyou_shoukai/20070925-kintou/law-031.html)。つまり「長期雇用によるキャリア形成の為」という理由を掲げれば、例えその理由が単なる「建前」に過ぎないものだったとしても、採用の対象を新卒者に絞ることも合法と評価して差し支えないと思われる。この理解が正しければ、茂木さんの主張は誤りだということになる。


僕の考えでは、新卒一括採用を法的な視点から問題視するとすれば「雇用対策法の第10条という年齢差別を禁止する規定があるのに、同法律の施行規則によって、これが空文化しているのではないか?」という問いの立て方が適切だと思う。第10条の趣旨は「高年齢者や年長フリーターなど、一部の労働者の応募の機会が閉ざされている状況を改善すること」にあるはずなのに、その趣旨を没却する文章が施行規則に見られるのはおかしいはずだ。雇用対策法の第10条の存在意義について、再考が必要なのではないだろうか。

雇用対策法の第10条は、施行規則によって無意味なものとなっているという意見に共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村 
このエントリーをはてなブックマークに追加

就活における「ハイパーメリトクラシー的評価」を加速させる「日本の就活は専門的な能力が無くても企業に入ることができるから良い」という声

現在の日本の就活のあり方を擁護する理屈の一つとして「専門的な能力を身につけて無くても、企業に入ることができる」という、就活生に優しいものとなっているんだというものがある。欧米の会社では専門的な能力・インターン経験が無いと会社に入れないが、それに対して日本の就活はポテンシャルが大事なので、実務経験・専門性が欠けている就活生でも採用してもらえるという主張だ。


確かに、この意見は一定の正しさを含んでいると言えるかもしれない。しかし、「実務経験・専門性が欠けていても採用してもらえる」という要素を単純に「日本の就活の長所」と見なして良いのだろうか。むしろこの要素が、多くの人が問題視する「採用基準が曖昧で、自分に何が足りなかったのかを把握することができない」という短所を生み出しているのではないか。


過去記事「能力があったり、努力をしたから内定を取れるのではなくて、内定を取れた結果としてその人の能力や努力が後付けで肯定される・・・?」で次のツイートを紹介した。ここでいう「全人格評価」を具体的に言えば「意欲や対人関係能力、創造性など人格や感情の深部、人間の全体に及ぶ能力を評価の遡上に載せる評価形式」と表現することができ、学者の本田由紀先生はこれを「ハイパーメリトクラシー的評価」と名づけている。そして本田先生は、「格差社会という不幸」という本に収録されている宮台真司先生・堤未果さんとの対談の中で、欧米も「ハイパーメリトクラシー的評価」を重視する傾向にあるが、それでも日本は欧米と比較してこの評価形式が極端な形で進んでいると分析している。


どういうことかというと、欧米では個別具体的な職業能力の評価が日本より遥かに高く、これが評価の曖昧さの加速に歯止めをかけている効果をもたらしている。対して、日本にはこのような歯止めがないので、就活生は企業から必要とされるためにどのような能力を、且つどのような手段で身につければ良いか分からない漂流状態に陥ることがあるといえる。勿論、就活生の中にはあっさりと内定をもらい就活を終える人も少なくないわけだが、一方で「自分では内定を取るために必要な努力をしているつもりなのに、なかなか結果が出ない・・・」と悩む就活生がいることは、就活がうまくいかないことを理由に命を絶つ人がいることからも明らかだろう。


僕の考えでは「日本の就活は~なあり方だから恵まれている」という表現はかなり的を外していて、どのようなあり方でも長所もあれば短所もある。今必要なのはそれぞれのあり方の長所・短所を比較した上で「どのようなあり方が一番マシか」を考える議論だと思う。


「日本の就活は実務経験・専門性共に求められないから恵まれている」という主張は単純すぎるという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村 

「学生」の就活自殺のみに注目するのでは不十分だ

一昨日毎日新聞で「就活生:"失敗で自殺"4年で増加 NPOが悩み分析へ」という記事が掲載された。この記事では、「就職失敗」が原因で自殺をした10〜20代が07年の60人から11年の150人と2.5倍に、大学生など学生は同16人から同52人と増えていることが報じられている。


さらに、去年7月にmy news japanに掲載された「警察庁が就活自殺の分析を妨害、集計データ開示で嫌がらせ "自殺統計原票"の情報公開請求」という記事では、大学生の自殺原因のうち「その他進路に関する悩み」というものが「就職失敗」を上回っていることが指摘されている。警察庁発表の統計上、「就職失敗」を理由に自殺した大学生が41人なのに対して、「その他進路に関する悩み」が原因の自殺は83人に達している。これは少なからず就活と関連する可能性があるのだから、この数字にも注目すべきだという主張がなされている。「その他進路に関する悩み」が原因の大学生の自殺も「就職失敗」による大学生の自殺と同様に、07年が53人なのに対して11年が83人と増加傾向に有る。


毎日新聞の記事に戻ると、NPO法人・自殺対策支援センター「ライフリンク」が就活生への聞き取り調査を行い、就活失敗が原因とされる自殺の防止、就活の悩みや不安を分析しケアすることを目指すことが報じられている。調査は1〜2月に大学生と大学院生の計100人程度を対象に実施され、その結果は3月末のシンポジウムで発表することが予定されているという。


過去にはposseが2010年の12月から2011年1月に、大学生・大学院生計536名(その内、大学4年・修士2年といった最終学年の人は98名)に対するアンケート調査を行っている。その結果、大学2・3年生は「就職が決まらないのではないか」「4年生の間に受からなかったら自分はどうなるのだろう。留年?非正規?」、「希望している企業や職に就けないかもしれない」という不安を告白しており、就活を終えた大学4年生も「内定をもらうことに必死になりすぎて、自分が何をやりたいのかわからなくなった」という悩みを抱えていることを明かしている。ライフリンクの調査により、就活生を自殺・欝に追い込む要素がさらに明らかになれば良いと思っている。


言うまでもなくライフリンク、posseの調査には大いに意義がある。ただひとつ気になったのは、両団体の調査対象が大学生・大学院生に限られているということだ。勿論、両団体はNPOということでマンパワーにも限界があるだろうし、調査対象に絞りをかける必要性があるのは分かるので、純粋に「既卒の就活生の心理状態に関する調査はあるのかな?」と感じたわけである。


毎日新聞の記事にあるように、11年に「就職失敗」を理由に自殺した10~20代は150人であるわけだが、その内学生は52人に留まる。これは即ち、高校・専門学校・大学を卒業した後就活をしたけれど失敗して自殺したというケースの方が数としては多いことを意味していると思われる。試しに警察庁のホームページにアクセスして「平成22年中における自殺の概要資料」も見てみたけれど、これによると「就職失敗」を理由に自殺した10~20代が159人で、その内学生は53人にとどまっている。


別に学生の「就職失敗」を理由とした自殺の深刻度が低いと言いたいわけではないが、この問題ばかりを考えるのもどうかと思う。既卒の就活生には「遠まわしに、年齢を理由に落とされた」だとか「エントリーできる会社が減り、仮にエントリーできたとしてもそれは明らかに継続的に働き続けられる会社ではない」という在学中の学生にはない特有の悩みがある。また以前、twitterで「大学卒業後だとバイトを見つけることすら難しい現状があるので、そうしたことも伝えてください」という趣旨のリプライを頂いたこともある。こういう一面も可視化していくべきだと感じるし、もし余裕があればその一面を文章化してライフリンクさんに勝手に送りつけてみようかな(笑)と検討している。


「学生」の就活自殺のみに注目するのでは不十分だという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村

「ノンエリートの働き方論」を考えるにあたっては、海老原嗣生さんの文章を読むのが良い

ポストセブンの「今年は"ノンキャリ正社員"という働き方が話題集めると識者」という記事で、常見陽平さんが「2013年は"ノンキャリ(ノンエリート)正社員"が話題になる」、「職務を限定した正社員という働き方が出てくるかなと期待しております」とコメントしている。常見さんは去年「僕たちはガンダムのジムである」という本を出して、問題提起の力点を就活から働き方論、特にノンエリートの働き方論にシフトしている感がある。


ただ常見さん以前にも、こうした議論は既に問題提起されている。例えば、海老原嗣生さんは2010年時点で「若者はかわいそう論のウソ」という本の中で、「大卒総合職」と「非正規・派遣」の中間にある「正社員体系」を導入するべきだと主張している。「職員」だとか「テクニシャン」だとか、恐らく名称は何でも良いのだけれど「そこまで出世はしないし、給料もそれほどでもないけれど、職務はきちんと決まっている正社員枠」の導入を提案しているのだ。


僕は海老原さんの意見の方向性には賛成なのだが、同時に海老原さんの「大卒総合職があって、その他は何もなくて、いきなり非正規・派遣となる」という記述には違和感を覚えた。具体的には「その他は何もなくて」というところが引っかかったのだが、この違和感を解消したのが渡邉正裕さんの「"一般職を選ぶ男性"問題の答え」という記事だった。この記事では、三菱東京UFJ銀行の「転勤なしのAP(エリアプロフェッショナル)職」の例が紹介されている。これは、かつて全員が女性だった「一般職」に該当するものであり、これは国家公務員でいうところの「国家2種(今は国家一般職)」に相当するようなものらしい。2009年入社1500人のうち約1000人がAP職で、その内男性も約100人いたそうだ。上述のとおり、この枠が「かつて全員が女性だった」ことを考えると、かなりの男性がこの枠に参入してきたと評価できるのではないか。


また、渡邉さんはJR東日本の例も紹介している。2008年4月の入社でいうとキャリア200人のほかに、鉄道事業配属(つまりノンキャリ)として社会人含め約1200人も採用されているというのだ。この枠は高卒、専門学校卒が占めることが多いらしいのだが、現在ではこの枠の約3分の1は大卒が占めているそうだ。勿論、海老原さんが言うような「総合職と非正規の中間がない」会社もあるだろうけれど、渡邉さんが紹介したように会社が既に「ノンエリート枠」を導入し、そこに男女問わず、あるいは大卒か高卒であるかを問わず、その枠で働くことを望む人材が参入していっている事情もある。


渡邉さんの問題意識は「"転勤したくない、安定した大企業で働きたい"という需要を持つ人はいるが、その需要に応えるコースを会社が用意していない」ことにある。その上で「"総合職=一生転勤族"というカルテル的な戦後の一億総玉砕体制から抜け出し、転勤ナシの総合職、転勤しなくても出世できるというコースを作る」ことを提言している。特に「転勤しなくても出世できるというコースを作る」という主張は、海老原さんの「そんなに出世しない枠を作ろう」という主張とあまり馴染まないもののように思われるが、それでも両者の問題意識として「皆が、転勤がつきものの"総合職"として働かざるを得ないような環境はおかしい」というものは明らかに共通している。ちなみに、渡邉さんの記事も2010年に書かれたもので、約3年前の時点でこの問題が議論の遡上に乗ったことが伺える。


加えて、現在は既にこうした枠を設けることの問題点も議論されている。海老原さんは欧米型の会社の例を参照した上で、ノンエリート枠を作るとその枠で働く人の労働意欲が低下しがちになるという問題点を指摘している。この指摘に加えて、渡邉さんが紹介した三菱東京UFJやJR東日本で「ノンエリート」として働く人の労働環境・モチベーションはどのようになっているのか。あるいは、三菱東京UFJにしてもJR東日本にしても「大企業」な訳だが、中小企業でも同じような仕組みを導入することができるのか。「ノンエリートの働き方」について考えるというのは、こうした疑問点を突き詰めて考えていくことを意味するのだと思う。


ところで、ポストセブンの記事で常見さんが「昨年、"僕たちはガンダムのジムである"(ヴィレッジブックス)という書籍を発表し、おかげ様で話題になったのですが、"ノンエリート論"としてご評価頂きました」と述べているが、常見さんがこの書籍で述べたノンエリート論と、海老原さん・渡邉さんが述べるノンエリート論は異なる。「僕たちはガンダムのジムである」で語られているのは所詮「ノンエリートの俺はこんなことを考えて、リクルートやバンダイ、そして作家として生き延びてきたんだ!」という常見さんの自分語りであり、会社にノンエリート枠を導入すべきという構造的な話はされていないので・・・。この記事を書くにあたって改めて「僕たちはガンダムのジムである」を読み返してみたけれど、やっぱりただの駄作としか思えない(笑)そんな訳で、「ノンエリート論」について考えを深めたいと思う人は海老原さんの記事を読むことを薦めたい。常見さんは・・・特になにもしないのが一番の貢献なのではないでしょうか(笑)


「そこまで出世はしないし、給料もそれほどでもないけれど、職務はきちんと決まっている正社員枠」の導入に賛成だという考えに共感してくださった方は、もし宜しければクリックをお願いします。
にほんブログ村 就職バイトブログ 大学新卒の就職・就職活動へ
にほんブログ村     
main_line
main_line
ブログランキング
おかげさまで、ブログ村の「就職バイトブログ」のカテゴリで「1位」を取ることが出来ました。この場を借りて、お礼を申し上げます。これからも記事を多くの人に読んでいただけたらと思いますので、もし宜しければ、今後ともランキングへのご協力を宜しくお願いいたします。
RSSリンクの表示
follow us in feedly 
最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
リンク
FC2カウンター
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
プロフィール

Author:lingmu
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。